第103話マスターの過去 マスターの頼み

文字数 1,083文字

元は一旦、実の両親や大人たちの話を受け入れた形にはなったけれど、やはり心の底では納得できない。
「お前らの勝手だろ?そんな理屈」
「俺は、そこまではおめでたくない」
「そもそも、神とか実感がない」
「コヘレト?だから何?俺に何の関係が?」

それでも、喜んでいる「実」の両親、マルコ神父とシスター・アンジェラや、探偵中村の様々な努力と貢献には反発もし難い。

そんな状態で、一旦話は休憩となった。
元が、少し外を歩こうと庭に出ると、マスターがベンチに座り。手招きをしている。
元は、拒む理由がない。

ベンチに座ると。マスターは元の肩をポンと叩く。
「まあ・・・簡単には・・・気持ちの整理はつかんだろ?」

「マジで・・・そうするのが一番と思っていても」
マスターは遠くを見た。
「言ってもいないし・・・言う必要もないかもだけどさ」
元はマスターの横顔を見る。
「え?・・・何か?」
マスターはポツリポツリと話す。
「この俺も、実は捨て子らしい」
「親はよくわからん」
「物心ついた時は、ギター職人の家でさ・・・」
「冬の寒い朝に井の頭公園で産着で放置されて泣いていた俺を親父さんが拾ったって」
「警察で探してもらってもラチがあかない」
「それでな・・・」
元は驚くばかり。
マスターの話は続く。
「親父さんも、おかみさんも子供がなくて」
「そのまま・・・育てられた」
元はようやく言葉を返す。
「ぞうだったんですか」
マスター
「俺のギターは、親父さんのギターを買いに来る。あるいは修理に来るプロに習った」
元は驚く。
「それで・・・あれほどに?」
マスターは横を向く。
「親父さんも、おかみさんも。いい人でさ」
「ギター作りも教えてくれたけど、俺はそっちは下手でね」
「ギター弾きとか音楽家と話を合わせるのは得意そうだからって」
「だから、お前にはギター作りよりは、音楽があふれるクラブみたいな」
「そんな癒しの店を作れと・・・」
元はマスターに質問
「そのギターの店は?」
マスターはふっとため息。
「ああ、その跡地が今のクラブの場所」
元は、「へえ・・・そうか・・・」と思ったけれど、マスターが何故、そんな話をしたのかがわからない。

マスターは続けた。
「だからさ、俺が聞く範囲でだけどね」

「うん・・・」
マスター
「まあ、ヤバい話ではないだろ?」
元は素直
「・・・それは。・・・そうですね・・・」
マスターは元の肩を。またポンと叩く。
「この話に乗っちまえよ」
「また何かあれば、相談に乗るからさ」

元の気持が。かなり軽くなった。
元は自然に笑う。
「マスターには、かなわない」
マスターはニヤリ
「早く弾きに来てよ」
「そうでないと・・・店も苦しい」
元はプッと笑っている。
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