第71話教会に到着 若者たち 深刻な大人たち

文字数 1,150文字

鎌倉の教会に戻り、まず元の部屋のセッティング。
ここでも、春麗がテキパキと、元は当然として、美由紀と奈穂美に指示、あっと言う間に住める状態となった。

元は殊勝にも礼を述べる。
「なんか、立派な部屋だ、ありがとうございます」

その言い方が面白いのか、三人の女子がプッと吹く。
春麗
「最近は、素直だ、成長したね」
美由紀
「ブツクサ言って、困らせたの?」
奈穂美
「超冷たい時があるの、蹴飛ばしたくなるくらい」
春麗
「もう蹴飛ばしてもいいかも」
美由紀
「どんな顔するのかな」
奈穂美
「あれ・・・都合が悪いと、横を向くし」

元は、いたたまれなくなった。
そのまま、自分の部屋を出て行く。

春麗は、元の意図を見抜いた。
「練習するの?私も行く」

美由紀と奈穂美も、結局、元の練習を聞きたいので、後をついて行くことになった。


さて、若者たちは、そんな状態であったけれど、教会の談話室では、大人たちが難しい顔で、相談していた。
尚、音楽雑誌社の杉本にも連絡が入ったようで、その姿がある。

中村
「千歳烏山の家の、土地と建物の関係ですが」
「先ほどお話した通りで、所有者は本多佳子様」
「その本多佳子様が、田中さんと賃貸借契約を交わしています」
中村は、全員が頷くのを見て、続けた。
「本多佳子様は、元君に、最初から、その土地建物を相続させる意向です」
「もちろん、将来的な、問題が少ない時期の養子縁組の一文も入っています」
「賃貸借契約書にも、その一文を入れています」

マルコ神父は、厳しい顔。
「それを知っていながら、元君に酷い仕打ち・・・か」
シスター・アンジェラは、ほぼ怒っている。
「自分の勝手で、夜中に放り出してみたり」
「感情に走るばかりで、元君を痛めつけるばかりで」

中村は続けた。
「本多佳子様については、面会は名古屋の自宅でできました」
「実は、よほど元君を気にかけていたのか」
「名古屋の噂の難しい社会では、当時は引き取れなかったと」
「田中夫妻と元君の関係、コンクールの話をしたら、涙をボロボロと流されて」
「今すぐにでも、養子にしたいとか」
「ただ、娘と山岡さんの意向があるとか、それも気にしていました」

杉本が口を挟んだ。
「既に佐伯都議は失脚、次の選挙は出られません」
「奥様から離婚の申し出があって、それも近日中に決まるでしょう」
「それから尾高さんは、被害女性からの裁判が続きます」
「スキャンダルが酷いので、ステージは、今後は無理です」
「それと、税務署もいずれ」

マルコ神父は、話題を変えた。
「田中晃子、旧制菊池晃子の実家の極道がどう出て来るか、それが心配です」

中村は厳しい顔。
「かなり衝動的で、何をして来るかわからない極道です」
「血を見るのが、好きな親分です」
「ただ、無国籍、無戸籍の男を使うので、捜査が混乱して進まない」

談話室での相談は、厳しさを次第に増している。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み