第92話春麗の思い 探偵の中村の思い

文字数 802文字

元と本多美智子、山岡氏の朝食を見ながら、春麗はどうしようもない絶望を感じていた。
「元君は辛い、辛過ぎるいきさつがあった、それは・・・マルコ神父とシスター・アンジェラに聞いて知ったけれど」
「私なんか、親は中華極道に殺された、会いたくてもどうにもならない」
「万が一もあるからと墓参さえ止められている」
「もし、これ以上元君に近づいたら、あの三人の命にも危険が及ぶ」
「そこまで中華の極道は容赦なくしつこい」

春麗は隣に立つ美由紀と奈穂美を見て、ため息をつく。
「この幸せなお嬢さんたちでは・・・元君はコントロールできない」
「単なる同級生で、元君に魅かれている程度だもの」
「元君の心の闇に近づける、入れるのは・・・私しかいない」
「でも・・・」
「どうしたらいいのか・・・わからない」

春麗が感じ取ったように、美由紀と奈穂美は、元と本多美智子、山岡氏の朝食を見ながら、「すごいなあ」「超一流のプロに囲まれて・・・近づきがたい」「いいや、今日はお客様になって聞く専門」「もう元君は。別世界の人」とささやき合う程度。
朝食の見物も少ししてやめて、自分たちの部屋に戻ってしまった。

探偵の中村は頭をグルグルと回転させている。
「養子縁組になるのか」
「いや・・・そもそもが実子だ」
「田中夫妻は、既にアウトか」
「その事情を知れば・・・・驚くだろうが」
「元君は田中の姓を名乗るべきではないし、本人がその気もないはず」
「山岡氏と本多美智子のどちらの姓になるのか」
「山岡氏にしても本多美智子にしても・・・その面の法知識には疎いはず」
「いずれにしても厄介な説明やら、作業がある・・・」

そう思いながらも、中村の顔には笑みがある。
「人殺しの捜査を思えば、何のことは無い」
「ここまで付き合ったんだ、最後までキッチリと始末をつける」
そこまで心を決めた中村は、マルコ神父とシスター・アンジェラ、本多佳子に目配せ。
そのまま別室に入り、対応を話し合うことにした。
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