第46話鎌倉に来た大学関係者と元

文字数 1,137文字

最初に大学職員の三井が、元に声をかけた。
「酷い目にあったようだね」

元は頭を下げる。
「ご心配とご迷惑をおかけしまして」

吉村教授が元の前に立った。
「元君は、私の大事な学生です」
「だから、すごく心配で」

鈴木奈穂美は涙で声がグジュグジュ。
「どうしてこんなことに?」

元は、脇腹に手をあてる。
やはり痛みが強いようで、声が出ない。

元が答えられないので、シスター・アンジェラが説明する。
「吉村教授は長年の親友で協力者なの」
「その吉村教授に連絡を取って来てもらった」
吉村教授
「学生証も心配で、三井さんにも声をかけたの」
元は、また下を向く。
「どこにいったのか、海の中かも」

マルコ神父が、病室にいる全員に声をかけた。
「元君は、もう少し休ませようかと思います」
「教会の病院から春麗看護師を専属で派遣してもらいました」
「ですから、安心なさってください」

春麗が頭を下げると、マルコ神父が続けた。
「元君は一旦、病室に戻します」
「何しろ、脇腹に酷い打撲」
「声を出すのも、辛いはず」
「我々は、我々で、別のことをお話しましょう」

ほぼ全員が頷くけれど、鈴木奈穂美は、春麗が気になっている。
「春麗・・・中国の人?」
「やばいくらいに可愛い」
「スタイルがいい、完敗」
「専属で元君の面倒?」
「でも、私には看護知識はないし」

元が、奈穂美に声をかけた。
「鈴木さん?」
「そういう名字だったよね」

奈穂美は、少し気に入らない。
いろいろ話をしたのに、名字もうろ覚えで、名前で呼んでもらえない。
それでも「鈴木奈穂美です」と、頷く。

元は奈緒美に質問。
「心配とか、良くわからないけれど、鈴木さんが、どうして来たの?」
「それと、中村さんと、杉本さんと、マスターまで?」
「全く意味がわからない」
「吉村先生と三井さんは、申し訳ないけれど、納得できた」

奈穂美が「えっと・・・それは・・・」と言葉に詰まると、吉村教授が代わりに答えた。
「奈穂美さんとは、たまたまキャンパスで会ってね」
「元君と同じクラスで、同じ千歳烏山」
「知らない仲でもないかなと、ついて来てもらったの」
「それから、中村さんと、杉本さん、マスターは・・・」
「奈穂美さんが中村さんに連絡をしたら、そういうことになった」

目をクルクルとさせる元に、シスター・アンジェラ。
「元君、よく理解できていないかな」
「でもね、それだけ、元君を心配する人が、多いの」
「決して、一人ではないの」
「わざわざ、鎌倉まで来てくれるの」

奈穂美は、ホッとした顔。
そのついでに、マルコ神父に願い出る。
「あの・・・私も、元君に付き添っていていいでしょうか」
「それとも・・・」

マルコ神父は即断。
「大人の話になるかもしれません、元君のそばに」

奈穂美は「大人の話」は意味不明。
しかし、元に付き添えるので、うれしさを感じている。
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