第101話マスターと元のセッションから大セッションに

文字数 1,019文字

ホールに入ると、マスターが元に一言。
「いろいろ、思うところはあるだろうけどさ」
元が「ん?」とマスターを見ると、マスターはさっさとギターを抱えている。
元はキョトンとした顔。
「マスター、何やるの?」
マスターは含み笑い。
「アランフェス協奏曲はできる?」
元は少し考えた。
「俺がハーモニカで?」
すると即座にマスターはハーモニカを元に渡し、早速前奏を始めてしまう。
元は「これ・・・ギターの曲では?」と言いながら、前奏に合わせてハーモニカでアランフェスのメロディを吹き始めた。

まず山岡保が反応。
「これ・・・いい・・・マスターの渋いギターとの掛け合い・・・元も最初は手さぐりで・・・今は完全にアランフェスの哀愁の世界・・・けだるい夕闇の・・・すばらしいニュアンスで・・・」
その後は山岡保も無言で目を閉じて聴くだけの状態になる。
また、本多美智子も他の人たちも、ただただ、うっとりと聴き入るだけとなってしまった。

マスターと元のアランフェスが終わった。
元はマスターに苦笑い。
「マスター・・・ギター上手過ぎ・・・それにハーモニカなんて久しぶりで焦った」
シスター・アンジェラがその元に言葉をかける。
「すごく良かった・・・二人とも・・・ありがとう」
「でも、それ以上に、元君の笑顔が実に自然で・・・いいなあと」

元は、本当に自然な笑顔。
「マスターに感謝かな・・・マスターがすごいから・・・乗った」

その後は、元がピアノやギター、マスターはギター、本多美智子はヴァイオリン、山岡保はギター、ピアノ。
様々な曲に合わせて、自由に楽器を変える大セッションとなった。
カウントベイシー、エリントン、バッハやビートルズをジャズに即興アレンジしたもの、曲数は約20曲、とても書ききれない。
ただ、残念ながら、春麗、美由紀と奈穂美はレベルの違いを感じ、参加できなかった。

その演奏の合間に元がマスターに聞く。
「クラブで何故弾かなかったの?マスター、すごいよ」
マスターはケラケラと笑う。
「そんなことしたら、誰がカクテルを作って、料理を作る?」

っジャズの大セッションが終わり、肩を叩き合い、笑い合う音楽家たちを見ながら、音楽雑誌社の杉本は「信者向けサイトでの演奏配信だけでは・・・もったいない」と思う。
しかし、「次」を考えるには「元君の今後の生活がどうなうのかを確認しないと」と思うので、言い出せない。

探偵の中村は本多佳子とまず、密談。
その後、密談にマルコ神父とシスター・アンジェラも加わっている。
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