第88話夕食の席で 山岡氏と元

文字数 976文字


春麗
「何でも、山岡さんは,慈善コンサートに取りくんでいて、その関係らしい」
「大きな演奏会もこなすけれど、そういう活動を昔からしているらしい」
「教会とか孤児院とか、そんな場所で」

若者4人が食堂に着くと、春麗の言葉通りに、巨匠山岡氏、マルコ神父とシスター・アンジェラを挟んで、本多佳子と本多美智子も座っている。
また、中村と杉本も座っている。

元たちが席に着くと、マルコ神父が話を始めた。
「明日の日曜集会の前に、世界有数のヴァイオリン奏者本多美智子さんと、そのお母様、本多佳子様がお越しいただき、また、世界的に有名な指揮者の山岡さんもお迎えしました」
「誠にありがたく、神に深く感謝するところです」

その「神に感謝」の言葉でシスター・アンジェラと春麗は十字を切る。

マルコ神父は、次に若者たちを紹介。
「そこに座るハンサムな男の子は、元君」
「かつてのピアノコンクール都大会の栄えある優勝者」
「明日はオルガンとピアノを弾いてもらいます」
「素晴らしい腕前、ご期待ください」
「それから元君の隣に、元君のご学友の美由紀さんと奈緒美さん」
「しっかり元君をサポートじてくれています」

元は戸惑った顔、美由紀と奈穂美は、顔を赤らめ、頭を下げる。
探偵兼弁護士の中村と音楽雑誌社の杉本の紹介を終えると、食事が運ばれて来た。

豪華な散らし寿司とお吸い物、大人たちには白ワインが付く。

シスター・アンジェラが「それでは、お召し上がりください」と声をかけ、会食が始まった。

元は戸惑いの中、食事を始めたけれど、途中から本多美智子と、山岡からの視線が気になった。
とにかく、じっと見て来るので、どうしても箸がそこで止まる。
しかし、散らし寿司は、実に美味しい。
途中で箸を止めながらも、何とか完食を果たした。

食事が終わると、山岡氏から声を掛けられた。
「元君はピアノが上手と聞きました」
「本多さんも認めています」
「明日は楽しみにしています」

元は、頭を下げた、
「拙い素人の演奏です」
「しっかり習ったこともなく、自己流に近いので、ご期待に応えられるかどうか」
「それでも、弾きますので、ご指導をいただけたら幸いです」

マルコ神父が元に声を掛けた。
「山岡さんも何曲か指揮をしていただけるとのこと」
「どうかな、元君」

元の目が大きく開かれた。
「光栄です、ベストを尽くします」
その元の返事に、本多美智子の目が、また潤んでいる。
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