第66話元は教会に一時住むことを承諾 一旦荷物を取りに千歳烏山へ

文字数 1,036文字

マルコ神父は、ゆったりとした表情で続けた。
「およそ、4週間ぐらいでどうかな」
「その頃には、慰謝料の交渉もまとまるだろう」

元は、反発は難しかった。
何よりお世話になった教会を裏切れない。
「ご迷惑でない、と言われるなら」
「それくらいの期間なら」
元々、自分以外の人が、千歳烏山の家に住んでいるわけではない。
誰も心配する人はいないどころか、無視されている状態が何年も続いているのだから。


マルコ神父が勧め、元が承諾したことから、早速千歳烏山の家に、当面の荷物を取りに行くことになった。
教会の大きなワンボックスカーをマルコ神父が運転。
シスター・アンジェラと春麗も付き添う。
その途中で、元は、申し訳なさそうな顔。
「あの・・・銀行にも寄りたくて」
「キャッシュカードが無い、前の財布と一緒に捨てられたかと」

シスター・アンジェラは、当然との顔。
「わかりました、銀行にも寄ります」
「通帳と届出印、身分証明書かな、それ以外の事情は私も説明します」

元は、下を向く。
「銀行とかって、慣れなくて」
「助かります」

都内に入ったところで、シスター・アンジェラのスマホに、探偵の中村から連絡が入った。
「かなり調べが進みました」
「あちこちにも、根回しをしています」
「詳細は教会にしましょうか」

シスター・アンジェラ
「今、千歳烏山の家に向かっています」
「もう、少し、30分ぐらいでしょうか、到着します」
「元君の荷物を、教会に少し運びます」

中村の反応も速かった。
「わかりました、私もすぐに向かいます」
「男手は必要でしょうから」

シスター・アンジェラは「ありがとうございます、よろしくお願いいたします」と、電話を終えた。

その後は、元は黙ったまま。
久しぶりの千歳烏山の家。
それに他人が入るので、何を言っていいのか、よくわからない。

春麗が元に声をかけた。
「心配しないでいいよ」
「必要な物を持って来るだけ」
「積み込んだら、すぐに銀行に行くでしょ?」

元は、ようやく口を開く。
「ありがたいけれど」
「ありがた過ぎて」
「いいのかな、こんなに」

マルコ神父が運転しながら、大きな声。
「何も心配はしないで欲しい」
「私たちが、こうしたい」
「むしろ、こうしなさい、と神に言われているような確信がある」
「そんな安心感がある、むしろ何もしないほうが不安で罪を感じる」

教会のワンボックスカーは、千歳烏山に入り、少しして家が見えて来た。

元は、その家を見て、驚いた。
探偵の中村が立っているのは理解できた。
しかし、その隣に、美由紀と奈穂美も立っているのだから。
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