第44話大学吉村教授と職員三井 元の「母」の無関心 

文字数 1,143文字

シスター・アンジェラから連絡を受けた、元の大学の吉村教授は、早速大学の学生課に出向いた。
対応したのは、三井という職員。
かつて、元が鈴木奈穂美をかばって、ブラスバンドのトランペット男と対決した時に、対応した職員でもある。

吉村教授は、シスター・アンジェラから聞いた話を端的に説明。
鎌倉までの同行を頼み込む。
「それでね、鎌倉の教会に出向いて欲しいの」
「どうやら学生証を持っているかどうか、わからないけれど」
「由比ガ浜の不良サーファー二人に、無抵抗で襲われて、財布ごと棄てられたとか」

大学職員の三井は冷静。
まず、学生名簿を見て、連絡先を見る。
「母親の携帯につないでみます」
「警察沙汰のようで、やはり連絡が必要かと」

早速、つながったようだけれど、表情がさえない。

「ああ、そうですか・・・」
「ご子息が鎌倉で暴行され、今、病院に、とのことですが・・・」
「回復したら警察の事情聴取があるようです」
「当分、日本に戻れない・・・」
「絶対に無理なんですね・・・」
「大学で対応してくれ?」
「それにも限度がありますが」
「いつか日本に戻った時に?」
「お金は渡してあるから?」
「・・・ああ・・・そうですか・・・」

大学職員三井は、呆れたような顔で、「母親」との電話を終えた。
「何となくおわかりですね」
「全く心配する雰囲気はなく」
「暖簾に腕押し」
「愛情そのものがないのかな」
「ご高名な音楽家ではあるけれど」

吉村教授は、大学職員三井を急かした。
「当てにならない人に期待しても、話は進みません」
大学職員三井も立ちあがった。
「わかりました、私も彼にお願いしたこともありますし」

学生課を出て、廊下を歩きながら、吉村教授は、三井に話しかける。
「ぶっきら棒な雰囲気はあるけれど、成績は優秀」
三井も頷く。
「骨っぽい学生で、女の子を守って」
「各講義にも、欠席歴はありません」
「浮ついた学生ではないですね」

校舎を出て、キャンパスを歩いて行くと、鈴木奈穂美が前を歩いている。
三井は、奈穂美の、下を向いて、悩んでいるような顔が気になった。
「鈴木さん、また、ストーカーかな?」

奈穂美は、ハッとした顔で、首を横に振る。
「いえ、それは、全くなくなりました」
「ご心配なく」

吉村教授は、また三井を急かす。
「鎌倉に急ぎましょう」
「元君が心配です」
「シスター・アンジェラも待っておられます」

三井が頷いて一緒に歩き出すと、奈穂美の表情が変わった。
奈穂美
「あの・・・元君に何か?」
「午前中は一緒でしたけれど・・・午後は見えなくなって」
「吉沢美由紀さんと、どこかに消えて」

三井の奈穂美への説明を、吉村教授が止めた。
「今は、鎌倉に急ぎましょう」
そして奈緒美に声をかけた。
「講義が終わっているのなら、一緒に」
奈緒美は、拒む理由がない。
一緒に鎌倉に出向くことになった。
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