第57話教会でのリハビリは進む 奈穂美の優柔不断

文字数 1,054文字

元は教会のオルガンの前に座ったけれど、やはり腕を動かすと、まだ痛みがある。
「無理みたい、今日はやめる」
残念そうな顔で、春麗のところに戻って来た。

教会を出て、再び病室に戻ろうと敷地内を歩いていると、現場検証と事情聴取をした警察官が警察車両を駐車場に停めている。

元が、少し頭を下げると、警察車両から出てきて、うれしそうな顔。
「よかった、スムーズに歩いているね」
「それから、届け物がある」

一緒に病院の応接に入り、渡されたのは盗られた現金。
警察官
「現金は、そのままの金額」
元は、落ち着いた顔。
「金額は、正確には覚えていないので、それで構いません」

同席したシスター・アンジェラが、元にアドバイス。
「財布は買わないとね」
「明日でも小町通りに出かけたらどう?」
「気晴らしになるから」

マルコ神父が、アドバイスを加えた。
「面倒かもしれないけれど、どこでも連絡ができるように、スマホを持ったらどうかな」

元は、少し困惑。
「財布はともかく、スマホは考えたことがなくて」
「何を、どれを買っていいのか、わからない」
「昔・・・断られたこともあって」

シスター・アンジェラは気がついた。
「それは、未成年者の保護者の関係かな?」
「連絡が取れなくて?」

元は、また顔を下に向ける。
「ショップから母親に相談したら、持つ必要はないとか」
「それで・・・」

マルコ神父が、落ち着いた顔。
「もう20歳を過ぎている」
「それほど心配しなくてもいいかな」

そんな話がまとまり、翌日に、元は春麗と一緒に、鎌倉小町通りを散歩することになった。


さて、奈穂美は同じ日に、母律子から話しかけられた。
「奈穂美、例の文化祭のおばさんコーラスね」

奈穂美
「何かあったの?」
「結局、深沢先生が弾くの?」

母律子は、プッと笑う。
「結局、中止」
「実は、メンバーに知っている奥様がいてね」
「深沢さんの言ったこと、やったことをそれとなく」
「もちろん、実名は出さないよ、例の先生がって」

奈穂美は驚く。
「お母さん、なかなか・・・怖いなあ」

母律子
「その後ね、その話が伝わって、彼女の生徒が次々に辞めたとか」
「奥様連中からも、嫌われて、挨拶もされない」
「傷心京都旅行かな、それとも、不幸なヒロインで家にこもって泣いているかな」
「身から出た錆だよ」

奈穂美は、深沢講師よりも元を思った。
「何とか元君に知らせたいな、少しは喜ぶかな」
しかし、元にスマホはないので、教会の病院に電話するしかない。
「春麗と仲良しで、私の話を聞いてくれるのかな、それとも、どうでもいいのかな」
奈穂美は、結局優柔不断、電話をかけられない。
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