第64話 白狐の狙い
文字数 1,956文字
その頃病院を1人の男が訪れていた。
前日結局疎井アヤメの居所をつかむことができなかった松本だったが、どこから話を聞きつけたのか咲薇たちの前に突然現れた。
『また犠牲者が出てしまったな』
咲薇は気づくと松本に向かっていった。
『なぁ…あいつ誰なん?なんであたしらんとこに現れたん?あんた刑事やろ?この件担当しとんのやろ?まだなんも分からんの?』
『奴が現れたんは君らのとこだけやない。この前は京都、兵庫、その他にも色んなとこに出現しては被害を出しとる。せやけどな、ホンマに斬りつけよったんはこれが初めてや。いや、これが最初になってしまうかもしれん』
『そうか…だからあの外人女も…』
『外人やと?それまさか嵐山か?』
『そいつがいきなり現れよって狐どこや言い始めたんや。あんたあいつ知っとんの?』
『知っとるも何も、ここらで不死鳥の鳳凰イデア知らんもんなんておらんやろ。強くてルックスも良くて1つの暴走族の総長でありながら超一流ホテルの娘や。芸能人クラスやぞ』
『え?』
『それって…』
『どっかで会ったような…』
『イデア…さん?』
あまりにも似すぎた特徴に玲璃たちは顔を見合わせていた。
『玲璃。君ら、知っとるの?』
『いや…知ってるっていうかさ…』
『玲璃がさぁ、新大阪からの道はもうバッチリ覚えたって言うから信じてついてったら京都まで行っちゃってさ。そこで片言の綺麗な外人さんに助けてもらったんだよ。スゲー高そうなホテルにタダで泊まらせてくれてさ』
玲璃はおそらく誤魔化そうとしたが麗桜はそれをさせなかった。咲薇と松本は一瞬どこをどう間違えたらそうなるのか思い浮かべしばらく考えたが、とうとう理解できず2人共微かに笑うのをこらえている。
『それにしても片言?あたしが見た時はバリバリの京都訛りやった気がしたけど』
咲薇の言葉に松本もうなずいた。
『そのはずや。奴は生まれも育ちも日本や聞いとるで』
蘭菜はやっぱりなという顔で溜め息をついた。
『奴は堂々と特攻服着て1人で大阪ウロウロしとるらしいで。あいつにも気をつけた方がえぇ』
『…なぁ松本さん。なんか方法はないの?本当になんの目星もついてへんの?』
咲薇は眉間にシワを寄せ松本の服をつかんだ。
『分かっとる。なんとかせなあかんのは百も承知や。あれから1年かけて奴は色んなチームに手をかけとる。ついに不死鳥まで動き出しよる。それだけやない。兵庫、奈良、和歌山、この辺一体に火種をまいとったんや。今もうなっとるように白狐はどこや誰やいうことになる。このまま行ったらどうなる?「あそこのあいつがそうや」「あのチームがかくまっとるらしいぞ」なんてことになる。そんな中本物はどんどん犠牲者を出しよる。これが今回みたいに斬りつけるなんてことが増えたらどないすんねん。運が悪ければ犠牲者は死に、みんなが白狐を本気で殺そうと思うようになる。そうなったら警察にもなかなか止められへん。この辺一帯は血の海や。奴は暴走族同士殺し合いをさせるつもりや』
『そんな、殺し合いて…』
『1年前の事件が全ての始まりや。暴走族のケジメで人が死に、その後次々に関西中の暴走族が襲われ、ついに刀で斬られとんのや。やられたチーム同士の争いは必ずエスカレートする。斬られるいうことになったら刃物も持ちだすようになるやろな。そうなればまた人が死ぬかもしれん。そんな混乱状態になってからが白狐の狙いかもしれんのや』
『…どーゆーこと?』
『考えたら分かるやろ?ホンマにそんなことになったら、その時には白狐になりうる人物がいっぱいおんねん。とうとう白狐にはたどり着けんようになる。永遠に狐に化かされて終わりや。そうなったタイミングで奴は目的を果たすやろな』
『目的?』
聞いていた全員もようやく松本の言いたいことが分かってきた。
『そいつはその時やっと自らの手で誰かを殺すつもりなんやないかと思うねん』
咲薇も玲璃たちに掠たちも、みんな背筋が凍る思いだった。
『なんやそれ…あいつ、あたしを殺すつもりなんか?』
『それはまだ分からん。せやから少し話を聞かせてほしくてな。斬られてしもたんは誰や?』
『あたしの友達の神奈川の子や。でも最初に狙われたんは萼やった。それをイデアが防いで、その後あたしが狙われてそれをかばってくれたんや』
『とすると少なくとも今日狙われたんは椿原と風矢やったということやな?何か今振り返って思い当たることはないか?』
『そんなんないよ』
『ん?椿原は叶泰くんの元カノやったか?君もそーか?』
『あたしは…何もないよ。ただの幼馴染みやし…』
『…それやとなんも分からんなぁ。まぁえぇわ。もしなんか分かったらすぐに連絡してくれ。それからお友達も気ぃつけんのやで。これ以上巻き込まれん内に帰った方がえぇ』
松本はそれだけ言うと行ってしまった。
前日結局疎井アヤメの居所をつかむことができなかった松本だったが、どこから話を聞きつけたのか咲薇たちの前に突然現れた。
『また犠牲者が出てしまったな』
咲薇は気づくと松本に向かっていった。
『なぁ…あいつ誰なん?なんであたしらんとこに現れたん?あんた刑事やろ?この件担当しとんのやろ?まだなんも分からんの?』
『奴が現れたんは君らのとこだけやない。この前は京都、兵庫、その他にも色んなとこに出現しては被害を出しとる。せやけどな、ホンマに斬りつけよったんはこれが初めてや。いや、これが最初になってしまうかもしれん』
『そうか…だからあの外人女も…』
『外人やと?それまさか嵐山か?』
『そいつがいきなり現れよって狐どこや言い始めたんや。あんたあいつ知っとんの?』
『知っとるも何も、ここらで不死鳥の鳳凰イデア知らんもんなんておらんやろ。強くてルックスも良くて1つの暴走族の総長でありながら超一流ホテルの娘や。芸能人クラスやぞ』
『え?』
『それって…』
『どっかで会ったような…』
『イデア…さん?』
あまりにも似すぎた特徴に玲璃たちは顔を見合わせていた。
『玲璃。君ら、知っとるの?』
『いや…知ってるっていうかさ…』
『玲璃がさぁ、新大阪からの道はもうバッチリ覚えたって言うから信じてついてったら京都まで行っちゃってさ。そこで片言の綺麗な外人さんに助けてもらったんだよ。スゲー高そうなホテルにタダで泊まらせてくれてさ』
玲璃はおそらく誤魔化そうとしたが麗桜はそれをさせなかった。咲薇と松本は一瞬どこをどう間違えたらそうなるのか思い浮かべしばらく考えたが、とうとう理解できず2人共微かに笑うのをこらえている。
『それにしても片言?あたしが見た時はバリバリの京都訛りやった気がしたけど』
咲薇の言葉に松本もうなずいた。
『そのはずや。奴は生まれも育ちも日本や聞いとるで』
蘭菜はやっぱりなという顔で溜め息をついた。
『奴は堂々と特攻服着て1人で大阪ウロウロしとるらしいで。あいつにも気をつけた方がえぇ』
『…なぁ松本さん。なんか方法はないの?本当になんの目星もついてへんの?』
咲薇は眉間にシワを寄せ松本の服をつかんだ。
『分かっとる。なんとかせなあかんのは百も承知や。あれから1年かけて奴は色んなチームに手をかけとる。ついに不死鳥まで動き出しよる。それだけやない。兵庫、奈良、和歌山、この辺一体に火種をまいとったんや。今もうなっとるように白狐はどこや誰やいうことになる。このまま行ったらどうなる?「あそこのあいつがそうや」「あのチームがかくまっとるらしいぞ」なんてことになる。そんな中本物はどんどん犠牲者を出しよる。これが今回みたいに斬りつけるなんてことが増えたらどないすんねん。運が悪ければ犠牲者は死に、みんなが白狐を本気で殺そうと思うようになる。そうなったら警察にもなかなか止められへん。この辺一帯は血の海や。奴は暴走族同士殺し合いをさせるつもりや』
『そんな、殺し合いて…』
『1年前の事件が全ての始まりや。暴走族のケジメで人が死に、その後次々に関西中の暴走族が襲われ、ついに刀で斬られとんのや。やられたチーム同士の争いは必ずエスカレートする。斬られるいうことになったら刃物も持ちだすようになるやろな。そうなればまた人が死ぬかもしれん。そんな混乱状態になってからが白狐の狙いかもしれんのや』
『…どーゆーこと?』
『考えたら分かるやろ?ホンマにそんなことになったら、その時には白狐になりうる人物がいっぱいおんねん。とうとう白狐にはたどり着けんようになる。永遠に狐に化かされて終わりや。そうなったタイミングで奴は目的を果たすやろな』
『目的?』
聞いていた全員もようやく松本の言いたいことが分かってきた。
『そいつはその時やっと自らの手で誰かを殺すつもりなんやないかと思うねん』
咲薇も玲璃たちに掠たちも、みんな背筋が凍る思いだった。
『なんやそれ…あいつ、あたしを殺すつもりなんか?』
『それはまだ分からん。せやから少し話を聞かせてほしくてな。斬られてしもたんは誰や?』
『あたしの友達の神奈川の子や。でも最初に狙われたんは萼やった。それをイデアが防いで、その後あたしが狙われてそれをかばってくれたんや』
『とすると少なくとも今日狙われたんは椿原と風矢やったということやな?何か今振り返って思い当たることはないか?』
『そんなんないよ』
『ん?椿原は叶泰くんの元カノやったか?君もそーか?』
『あたしは…何もないよ。ただの幼馴染みやし…』
『…それやとなんも分からんなぁ。まぁえぇわ。もしなんか分かったらすぐに連絡してくれ。それからお友達も気ぃつけんのやで。これ以上巻き込まれん内に帰った方がえぇ』
松本はそれだけ言うと行ってしまった。