第97話 火花と導火線

文字数 494文字

『ウチが白狐を囲んどるやと!!』

 その書き込みの情報を知った椿原萼は当然不機嫌だった。

『どこのアホがそんなことぬかしとんねん!!咲薇のアホがどう思われようと知ったことやないけどな、ウチの看板にまで泥塗られたらこれはただじゃ済ませられへんぞ!!くそが!!』

 散々周りの物に当たり散らした後もしばらく鼻息が荒かったが、やがて落ち着きを取り戻すと今度は逆に開き直った。

『ふんっ、まぁえぇ。いずれイデアも誘木浬も潰す予定やったんや。やったろうやないか。刀でもなんでも持ってきてみぃや。どいつもこいつも返り討ちにしたるわ』

 萼は逃げるつもりも話し合うつもりもなかった。

 それまで色んなチームが白狐狩りに乗りだし騒がしかった大阪の街はその書き込み後、急に静かになった。

 今のインターネットの怖い所だ。どんな話もすぐに広まる。それが関心のある話なら話ほど早く広く。

 関西中の暴走族たちが全ての恨みを晴らす為、神経を尖らせながらその日を待っていた。

 白狐を討とうと思う者。

 それを止めようと思う者。

 影で企てる者。

 それぞれの思いなど分かり合えるはずもなく、土曜日はあまりにも当たり前のようにやってきた。
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