第131話 運命なんてぶっ壊せ

文字数 1,021文字

『咲薇!咲薇!』

 名前を呼ばれて咲薇は目が覚めた。

 綺夜羅が目の前でとても心配そうな顔をしていた。

『綺夜羅…』

『咲薇!よかった!気がついたんだな!?』

 綺夜羅は思わず咲薇を抱きしめた。咲薇は状況に気がつくと声をあげた。

『綺夜羅!君ここで何しとんねん!』

『助けにきたんだよ!咲薇行くぞ、脱出だ!』

『何言うてんねん。あたしはここを墓場と決めたんや!死なせてくれ言うたやろ!』

 綺夜羅は咲薇のほほをはたいた。

『バカヤロウ!!こんなとこで死なせてたまるか!!お前、あたしと一緒にバイク屋やるんじゃねぇのかよ!!明日一緒に花火見るんじゃなかったのかよ!!』

 綺夜羅は目に涙を浮かべながら本気で怒っていた。

『綺夜羅…』

 咲薇は胸ぐらをつかまれた。

『お前の体がやったことだとしてもお前じゃねーんだろ?どこの誰がなんと言おうとあたしは信じるよ!帰るとこがねぇならあたしんちに住めよ!お前がツラいならあたしが守るから!だから…だからお前、死ぬなんて言うんじゃねぇよ!!』

 咲薇は何も言葉が出てこなかった。だが綺夜羅の気持ちは今の咲薇に刺さっていった。

 言葉は出なかったが、心が零れ出していた。

『お前、さっき言ったよな?こうなる運命だったって。だからあたしはそれをぶっ壊しにきた。お前が死ぬはずだった運命、それ乗り越えられたらよ、覚悟決めて一緒に生きようぜ。咲薇』

 咲薇は両手で顔を覆い泣いていた。

 何故だろう。

 さっきまで本当に死にたかったはずなのに。いや、今も死んで当然だと思っているのに、一粒の心残りができてしまった。

 本当は死にたくなかったなんてそんなことじゃない。

 この目の前の金髪ポニーテールの少女が必死に自分をそう思わせてくれている。咲薇はそれを強く感じた。

 罪人の人殺しの自分だけど、もし、生きることが許されるなら、自分も綺夜羅と生きたい。

 それを心の奥で思い始めていた。



『あっ!綺夜羅ちゃん!咲薇ちゃんも!』

 別の方を探していた愛羽と瞬がやってきた。

『風矢さん。無事でよかった…』

『咲薇ちゃん立てる?もう本当にヤバイよ。すぐ逃げないと!』

『瞬、愛羽、君らまで何やってんねん』

『何言ってんの?友達放っといて逃げれる訳ないでしょ?』

 瞬がボコボコの顔で言うと愛羽もボコボコの顔で笑ってうなずいた。

『咲薇。運命なんて、いくらだって変えられる。安心しろよ、行くぞ!』

 咲薇はもう1度手で顔を覆い首を縦に小さく振った。

 そして4人は脱出することができた。
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