第58話 わずかな光
文字数 1,682文字
綺夜羅は近くの病院に運ばれた。掠は病院に着くなり珠凛に連絡を取った。
『…珠凛?今どこ?あのね、今大変なの。咲薇ちゃんいたんだけどね…』
掠はそこまでで言葉が詰まり泣き出してしまった。見かねて咲薇は肩を抱いてやり電話を代わった。
『…珠凛か?ごめんな。今西成病院におんねんけどね、綺夜羅が大変なんや。今どこにおる?…うん。あ、そこからやったらすぐ来れる。うん、みんなおるの?そしたら病院まで来てくれる?それで詳しいこと話すよ。うん、それじゃ…』
それからすぐ他の4人が到着すると気は重かったが咲薇は話を始めた。燃も数も旋も珠凛も、それぞれ真剣な表情で聞いていたが、話が進む度少しずつ動揺を見せ、怒り、悲しんだ。
話が終わるとその後しばらく言葉のない空間に包まれていた。
『…ごめんみんな!綺夜羅をあんな目に合わせてしまって!』
咲薇はその沈黙に耐えられず深く、勢いよく頭を下げた。彼女を責める者などいなかったが、咲薇自身は責任を感じずにはいられなかった。
『咲薇ちゃん。私たち、あなたの様子が変だって気づいて探していたの。綺夜羅が何かあったら助けてあげようって言って。だからあなたのせいなんて言わないで。私たちがあの子に怒られちゃうから…』
みんなの気持ちを代表するように珠凛が言って、咲薇は自分を助けに来てくれた綺夜羅と掠の姿を思い出してしまった。
自分の為に斬られてしまった綺夜羅を思うとどうしようもなく心が痛んだ。
『…その白狐とかいう奴に心当たりはねーのかよ』
数は眉毛をハの字につり上げ抑えられない怒りを表情に出している。咲薇は悔しそうに首を振った。
『妖怪ヤローめ。あたしがきっちり退治してやんよ』
顔をひきつらせ低い声でそう言うと数は病院の外へ歩いていく。その後を燃が追いかけた。
『ねぇ!どこ行くのよ数!』
『決まってんだろ?妖怪退治だよ。その狐ヤローをぶっ殺しに行くんだよ!』
『ちょっと待ってよ!あんた1人で出てってどうすんの?相手刀持ってて平気で人斬っちゃうような異常者なんだよ!?』
『だからなんだよ。綺夜羅そんなにされて黙って座ってろってーのか?ジョーダン言うなよ。あたしは1人でも行くぜ。見つけ出してぜってーぶっ殺してやる』
『それであんたまでどーにかされちゃったらどうするつもりなのよ!気持ちは分かるけどさ、少し考えようよ』
『わりーな。あたしは考えるのが苦手なんだ』
結局数は1人で行ってしまった。止めてもムダなのはみんな分かっている。数が白狐と遭遇しないことを願うしかない。
それよりも今は綺夜羅だ。傷はやはり思った以上に深かったらしく、それをふさぐのにだいぶ時間がかかっていた。看護婦が処置が終わったことを告げに来た時には3時半を回っていた。
そしてここに来て最悪の事態はまだ終わらなかった。
『…血が、足りない?』
『はい。彼女大量に出血していて絶対的に血液が足りてないんです。彼女O型のRH-ですよね?丁度今日の昼間にRH-の血液を切らしていて、今病院の方にすぐ提供できる物がないんです。どなたか彼女と同じ血液型の方いらっしゃらないですか?』
綺夜羅の血液型はO型のRH-。残念ながら誰も一緒ではない。
O型はO型からしか輸血できない。それもRH-となれば670人に1人。それは簡単に聞こえてかなり薄い確率である。
『そんな…』
『どうするのよ…』
『なんとかならないんですか!?』
『明日になれば届くのは分かってるんですけど、一応他の病院にもあたってみてるんですけど夜ですし、なかなかこういう場合他の病院も関わろうとしないっていうか…』
要するにそれを待っていられない状況ということらしい。地元でない掠たちとチームをついさっき抜けたばかりの咲薇に血液の提供者探しは絶望的だった。
『…とりあえず、さ。明るくなってきたら駅とかで声かけまくってみようよ。』
現実的に希望は薄いが考えてできそうなことはそれ位しかなかった。
『あ…』
咲薇は思い出した。確か愛羽たちも22日から大阪に来ると言っていた気がした。
わずかな可能性に賭け咲薇は愛羽に連絡してみることにした。
『…珠凛?今どこ?あのね、今大変なの。咲薇ちゃんいたんだけどね…』
掠はそこまでで言葉が詰まり泣き出してしまった。見かねて咲薇は肩を抱いてやり電話を代わった。
『…珠凛か?ごめんな。今西成病院におんねんけどね、綺夜羅が大変なんや。今どこにおる?…うん。あ、そこからやったらすぐ来れる。うん、みんなおるの?そしたら病院まで来てくれる?それで詳しいこと話すよ。うん、それじゃ…』
それからすぐ他の4人が到着すると気は重かったが咲薇は話を始めた。燃も数も旋も珠凛も、それぞれ真剣な表情で聞いていたが、話が進む度少しずつ動揺を見せ、怒り、悲しんだ。
話が終わるとその後しばらく言葉のない空間に包まれていた。
『…ごめんみんな!綺夜羅をあんな目に合わせてしまって!』
咲薇はその沈黙に耐えられず深く、勢いよく頭を下げた。彼女を責める者などいなかったが、咲薇自身は責任を感じずにはいられなかった。
『咲薇ちゃん。私たち、あなたの様子が変だって気づいて探していたの。綺夜羅が何かあったら助けてあげようって言って。だからあなたのせいなんて言わないで。私たちがあの子に怒られちゃうから…』
みんなの気持ちを代表するように珠凛が言って、咲薇は自分を助けに来てくれた綺夜羅と掠の姿を思い出してしまった。
自分の為に斬られてしまった綺夜羅を思うとどうしようもなく心が痛んだ。
『…その白狐とかいう奴に心当たりはねーのかよ』
数は眉毛をハの字につり上げ抑えられない怒りを表情に出している。咲薇は悔しそうに首を振った。
『妖怪ヤローめ。あたしがきっちり退治してやんよ』
顔をひきつらせ低い声でそう言うと数は病院の外へ歩いていく。その後を燃が追いかけた。
『ねぇ!どこ行くのよ数!』
『決まってんだろ?妖怪退治だよ。その狐ヤローをぶっ殺しに行くんだよ!』
『ちょっと待ってよ!あんた1人で出てってどうすんの?相手刀持ってて平気で人斬っちゃうような異常者なんだよ!?』
『だからなんだよ。綺夜羅そんなにされて黙って座ってろってーのか?ジョーダン言うなよ。あたしは1人でも行くぜ。見つけ出してぜってーぶっ殺してやる』
『それであんたまでどーにかされちゃったらどうするつもりなのよ!気持ちは分かるけどさ、少し考えようよ』
『わりーな。あたしは考えるのが苦手なんだ』
結局数は1人で行ってしまった。止めてもムダなのはみんな分かっている。数が白狐と遭遇しないことを願うしかない。
それよりも今は綺夜羅だ。傷はやはり思った以上に深かったらしく、それをふさぐのにだいぶ時間がかかっていた。看護婦が処置が終わったことを告げに来た時には3時半を回っていた。
そしてここに来て最悪の事態はまだ終わらなかった。
『…血が、足りない?』
『はい。彼女大量に出血していて絶対的に血液が足りてないんです。彼女O型のRH-ですよね?丁度今日の昼間にRH-の血液を切らしていて、今病院の方にすぐ提供できる物がないんです。どなたか彼女と同じ血液型の方いらっしゃらないですか?』
綺夜羅の血液型はO型のRH-。残念ながら誰も一緒ではない。
O型はO型からしか輸血できない。それもRH-となれば670人に1人。それは簡単に聞こえてかなり薄い確率である。
『そんな…』
『どうするのよ…』
『なんとかならないんですか!?』
『明日になれば届くのは分かってるんですけど、一応他の病院にもあたってみてるんですけど夜ですし、なかなかこういう場合他の病院も関わろうとしないっていうか…』
要するにそれを待っていられない状況ということらしい。地元でない掠たちとチームをついさっき抜けたばかりの咲薇に血液の提供者探しは絶望的だった。
『…とりあえず、さ。明るくなってきたら駅とかで声かけまくってみようよ。』
現実的に希望は薄いが考えてできそうなことはそれ位しかなかった。
『あ…』
咲薇は思い出した。確か愛羽たちも22日から大阪に来ると言っていた気がした。
わずかな可能性に賭け咲薇は愛羽に連絡してみることにした。