第132話 言えなかった言葉
文字数 1,606文字
『あっ、ねぇ、やった!出てきたよ4人共!』
4人が煙の中から出てくるのをみんなそわそわしながら待っていたが4人の無事を確認し掠が声を出した。
みんな安心した途端に座りこんでしまった。イデアや萼に浬も一先ず安心しているようだった。
咲薇がみんなの所にたどり着くと萼と浬が咲薇に向かっていった。
『おい咲薇』
萼が咲薇の目の前に立つと咲薇がひざを着いた。だが萼は咲薇の胸ぐらをつかんでそれをさせなかった。
『萼…ごめん…あたし…』
『いや…』
もちろん殴られると思った。そのつもりで頭を下げようとしたのだ。
『…よぉ分からん…でも、お前がそうなったのはもしかしたらあたしのせいかもしれん…』
咲薇にはその言葉の意味は分からなかった。
『だから勝手に頭なんか下げるな。お前が頭下げるべきなんはあたしとちゃうやろ』
言われて咲薇は浬の方に向き直った。
『浬さん…』
『悪いけど咲薇、あたしはまだ整理がついてへん。お前を許せるとは思えん』
『すいません…』
『でも、2度と自分で命を落とすような真似はするな。そんなんは逃げてるだけや。死ぬんやったら、あの女に殺してもらえ。今あたしが言えるんはそれだけや…』
浬は咲薇の顔を見なかった。咲薇は頭を下げるとそのまま疎井冬の目の前まで行き土下座をした。
『…なんの真似?』
咲薇は手を地に着き下を向きながら叶泰のことを思い出していた。何を思い出しても出てくるのは涙だけだった。
そして疎井冬にとってもそれは同じことなのだと思うと、何を言葉にすればいいか分からなかった。
『…ごめんなさい…あたしは今謝ることしかでできません。こんなことしてもどうしようもないのは分かってます。でも、せめて頭だけでも下げさせてください。本当に…ごめんなさい…』
咲薇は涙を流しながら地に頭を着けた。
『ふざけないで。斬るわ…いいね?』
冬は刀を抜いた。ひざを着いて座る咲薇の首に刀をあてがうと刀を振りかぶった。
『ねぇ、ちょっと、嘘でしょ?やめてよ!』
それに気付いた燃や掠が止めさせようと走りだしていく。
しかし冬は咲薇の首めがけて振り抜いた。
私はどうすればよかったのだろう…
どうすれば叶泰くんのことを守れたのだろ
う…
そして死んだ叶泰くんに私は何をしてあげられるのだろう…
あれから1年が経つが、私はアヤメに外のことを任せながら自分の中でその答えを探していた。
死んでしまいたいと思ったことなど何回もあった。
他のことなど何も考えられなかった。
忘れることなんてできないし、私の心は彼を忘れたくなどなかった。
ではアヤメの言う通り復讐すれば何か変わるのだろうか。
叶泰くんに手をくだした者たち全てを地獄に誘えば。
もしくは暴走族などという愚かな者たち、その全てを滅ぼし去ることができれば、私の思いは報われ叶泰くんは笑ってくれるのだろうか…
だけど叶泰くんはもう帰ってこない。
もう2度と会えないのだ。
私は思う。私と出会わなければ叶泰くんは死んだりしなかった。
暴走族をやめて結婚することなど選ばなければ、ケジメを取られ、そして殺されることもなかった。
私なんかと出会ってしまったから叶泰くんは死んでしまった。
私が悪いのかな…
私が悪いんだ…
ごめんなさい。叶泰くん…
風矢咲薇の首をはねれば全て終わり…
私もそっちに行くから。でも私はきっと地獄に行くのかな…
「君は初めて見た時からなんか目が悲しそうやった…」
『……』
「心配せんでも大丈夫や。君は心が綺麗やから、君のことを大切にしてくれる人たちにこれからもっと出会えるよ…」
『……』
「君は、素敵な人や…一緒におれて幸せやったのは俺の方や…」
『……』
「君に出会えて…ホンマによかった…ありがとな…冬ちゃん…大好きやで…」
『……』
でも…もし、こんなことを言っていいのなら…
もう1度だけ、あなたに会いたい。
会って、私もあなたに…
ちゃんとありがとうと言いたかった…
4人が煙の中から出てくるのをみんなそわそわしながら待っていたが4人の無事を確認し掠が声を出した。
みんな安心した途端に座りこんでしまった。イデアや萼に浬も一先ず安心しているようだった。
咲薇がみんなの所にたどり着くと萼と浬が咲薇に向かっていった。
『おい咲薇』
萼が咲薇の目の前に立つと咲薇がひざを着いた。だが萼は咲薇の胸ぐらをつかんでそれをさせなかった。
『萼…ごめん…あたし…』
『いや…』
もちろん殴られると思った。そのつもりで頭を下げようとしたのだ。
『…よぉ分からん…でも、お前がそうなったのはもしかしたらあたしのせいかもしれん…』
咲薇にはその言葉の意味は分からなかった。
『だから勝手に頭なんか下げるな。お前が頭下げるべきなんはあたしとちゃうやろ』
言われて咲薇は浬の方に向き直った。
『浬さん…』
『悪いけど咲薇、あたしはまだ整理がついてへん。お前を許せるとは思えん』
『すいません…』
『でも、2度と自分で命を落とすような真似はするな。そんなんは逃げてるだけや。死ぬんやったら、あの女に殺してもらえ。今あたしが言えるんはそれだけや…』
浬は咲薇の顔を見なかった。咲薇は頭を下げるとそのまま疎井冬の目の前まで行き土下座をした。
『…なんの真似?』
咲薇は手を地に着き下を向きながら叶泰のことを思い出していた。何を思い出しても出てくるのは涙だけだった。
そして疎井冬にとってもそれは同じことなのだと思うと、何を言葉にすればいいか分からなかった。
『…ごめんなさい…あたしは今謝ることしかでできません。こんなことしてもどうしようもないのは分かってます。でも、せめて頭だけでも下げさせてください。本当に…ごめんなさい…』
咲薇は涙を流しながら地に頭を着けた。
『ふざけないで。斬るわ…いいね?』
冬は刀を抜いた。ひざを着いて座る咲薇の首に刀をあてがうと刀を振りかぶった。
『ねぇ、ちょっと、嘘でしょ?やめてよ!』
それに気付いた燃や掠が止めさせようと走りだしていく。
しかし冬は咲薇の首めがけて振り抜いた。
私はどうすればよかったのだろう…
どうすれば叶泰くんのことを守れたのだろ
う…
そして死んだ叶泰くんに私は何をしてあげられるのだろう…
あれから1年が経つが、私はアヤメに外のことを任せながら自分の中でその答えを探していた。
死んでしまいたいと思ったことなど何回もあった。
他のことなど何も考えられなかった。
忘れることなんてできないし、私の心は彼を忘れたくなどなかった。
ではアヤメの言う通り復讐すれば何か変わるのだろうか。
叶泰くんに手をくだした者たち全てを地獄に誘えば。
もしくは暴走族などという愚かな者たち、その全てを滅ぼし去ることができれば、私の思いは報われ叶泰くんは笑ってくれるのだろうか…
だけど叶泰くんはもう帰ってこない。
もう2度と会えないのだ。
私は思う。私と出会わなければ叶泰くんは死んだりしなかった。
暴走族をやめて結婚することなど選ばなければ、ケジメを取られ、そして殺されることもなかった。
私なんかと出会ってしまったから叶泰くんは死んでしまった。
私が悪いのかな…
私が悪いんだ…
ごめんなさい。叶泰くん…
風矢咲薇の首をはねれば全て終わり…
私もそっちに行くから。でも私はきっと地獄に行くのかな…
「君は初めて見た時からなんか目が悲しそうやった…」
『……』
「心配せんでも大丈夫や。君は心が綺麗やから、君のことを大切にしてくれる人たちにこれからもっと出会えるよ…」
『……』
「君は、素敵な人や…一緒におれて幸せやったのは俺の方や…」
『……』
「君に出会えて…ホンマによかった…ありがとな…冬ちゃん…大好きやで…」
『……』
でも…もし、こんなことを言っていいのなら…
もう1度だけ、あなたに会いたい。
会って、私もあなたに…
ちゃんとありがとうと言いたかった…