第62話 なんでいんの?

文字数 790文字

 緋薙豹那は小田原駅の新幹線のホームに立っていた。

 ほぼほぼ下着のようなノースリーブに尻が見えてしまう位短い短パンといった、極めて大胆な格好に珍しく髪を束ねてサングラスをかけ新幹線が来るのを待っていた。

 するとそこに1人の人物がやってきた。白いTシャツにデニムの半ズボンのオーバーオールを着た女が走ってくる。

『いや~間に合った~。間に合ったのはいいけど早く来いよ。こっちは今世界一急いでるっつーのによぉ』

 いつもは髪をオシャレに縛りあげているのでイメージが違ったが、喋り出すとその女は哉原樹以外の誰でもなかった。

『どっかで聞いたことある下品な声だと思ったら哉原じゃないか。お前こんなとこで何してるんだい?』

『あれ?なんだ朝帰りの飲み屋のねーちゃんかと思ったら緋薙じゃねーか。あたしは今から大阪に旅行だよ。お前こそ、そんな派手な格好してどこ行くんだ?』

『へぇ、これは奇遇だね。あたしもこれから大阪なんだよ。あんた髪下げてるとそんな面なんだね。声聞かなかったら分からないよ』

『おっ、あたしの美貌に気づいちまったか。ある時は神奈川一カッコいい暴走族。そしてまたある時は神奈川一可愛い暴走族ってな』

『やれやれ。よりによってお前と同じ方向か。まさか行き先まで一緒なんて言わないだろうねぇ』

 この時間に新幹線で大阪に行くということは、どう考えても目的は一緒だろう。お互いにそう認識したところでホームに2人の乗る新幹線がやってきた。

『よぉし、行こうぜ』

 ドアが開き2人が1歩中に入ると目の前にどこかで見たことがある顔ぶれがそこに立っていた。

『へぇ。お嬢さんにオトヒメ様。君たちも大阪に行くの?』

『…なんでお前らが』

 先に乗りこもうとした樹の足が思わず止まってしまった。

『決まってるでしょ?早く乗りなよ。行こう、あの子たちの所へ』

 豹那、樹と瞬たち3人が合流し、新幹線は大阪へと向かって動きだす。
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