第126話 ありがとう姉妹
文字数 1,041文字
『綺夜羅!何してんねん!なんでやり返せへんの!?』
咲薇は自分の中から真朧に一方的にやられていく綺夜羅の姿を見ていた。
『もうやめてよ!頼むから綺夜羅には手ぇ出さんといてよ!』
しかし、その声は空間に響いただけだった。
『どうしたらえぇんや…どうしたらこっから出れんねん…』
咲薇は何もないその空間を見回しながら考えたがどうすればいいかなど全く分からない。
『咲薇、聞こえてんだろ?』
綺夜羅はまだ外から話しかけてくる。
『聞こえてる…聞こえとるよ。全部聞いとる!』
咲薇は叫んだ。声はやはり少しも外に届かないようだが外の声は聞こえてくる。
『お前、今ツラいだろ?あたしがお前だったら死ぬ程ツラいと思うよ。自分がもしも掠たちをそんな風にしちまったって気付いた時には、あたしもそうなっちまうと思うんだ。きっと自分のことも信じられねーと思う』
咲薇は自分の中から真っ直ぐ綺夜羅を見ていた。目など合うはずがないのに綺夜羅の目がしっかりと自分のことを見ている気がした。殴られても殴られても綺夜羅はこっちを見ている。
『…だけどよ、咲薇。あたしはお前を信じるぜ。この中の誰が信じなくたって、あたしはお前を信じるよ。たとえお前が自分のことを信じられなくってもだ。だからさ…そんなとこいねーでいいから出てこいよ』
咲薇は泣いていた。自分が叶泰を刺して殺したということはもう全部分かっていた。咲薇が夢だと思っていた叶泰とのぼんやりしたやり取りは鮮明な記憶へと変わっていた。
それ故に死んでしまいたかった。
だけどもう綺夜羅を殴らせるのは嫌だった。自分のことなど信じられるはずはなかったが、それでも信じてくれようとする友達をもう自分の体で殴らせるのは嫌だった。
だが咲薇の気持ちなど関係なく、真朧は無抵抗な綺夜羅に拳を振りかぶる。
『ダメや!!』
何がどうなっているのかは分からないが、咲薇が叫ぶとここへ吸い込まれた時とは逆に暗闇が晴れていき、金縛りが解けたかのように自分の体に戻っていた。咲薇は寸前の所で手を止めた。
『…よぉ、咲薇』
綺夜羅には真朧と咲薇が入れ替わったのが分かったらしい。
『…やぁ、綺夜羅。無茶しすぎや』
『何言ってんだよ。言ったろ?信じるって』
綺夜羅が痛々しい顔で笑いかけると咲薇は嬉しそうな、でも悲しそうな顔をした。
『ありがとう…綺夜羅…』
落ちていたナイフを拾うと自分の腹に向けてそれを振りかぶった。
『あっ!!』
咲薇はおもいきり自分の体に向けてナイフを振り下ろした。
彼女は死ぬ気だった。
咲薇は自分の中から真朧に一方的にやられていく綺夜羅の姿を見ていた。
『もうやめてよ!頼むから綺夜羅には手ぇ出さんといてよ!』
しかし、その声は空間に響いただけだった。
『どうしたらえぇんや…どうしたらこっから出れんねん…』
咲薇は何もないその空間を見回しながら考えたがどうすればいいかなど全く分からない。
『咲薇、聞こえてんだろ?』
綺夜羅はまだ外から話しかけてくる。
『聞こえてる…聞こえとるよ。全部聞いとる!』
咲薇は叫んだ。声はやはり少しも外に届かないようだが外の声は聞こえてくる。
『お前、今ツラいだろ?あたしがお前だったら死ぬ程ツラいと思うよ。自分がもしも掠たちをそんな風にしちまったって気付いた時には、あたしもそうなっちまうと思うんだ。きっと自分のことも信じられねーと思う』
咲薇は自分の中から真っ直ぐ綺夜羅を見ていた。目など合うはずがないのに綺夜羅の目がしっかりと自分のことを見ている気がした。殴られても殴られても綺夜羅はこっちを見ている。
『…だけどよ、咲薇。あたしはお前を信じるぜ。この中の誰が信じなくたって、あたしはお前を信じるよ。たとえお前が自分のことを信じられなくってもだ。だからさ…そんなとこいねーでいいから出てこいよ』
咲薇は泣いていた。自分が叶泰を刺して殺したということはもう全部分かっていた。咲薇が夢だと思っていた叶泰とのぼんやりしたやり取りは鮮明な記憶へと変わっていた。
それ故に死んでしまいたかった。
だけどもう綺夜羅を殴らせるのは嫌だった。自分のことなど信じられるはずはなかったが、それでも信じてくれようとする友達をもう自分の体で殴らせるのは嫌だった。
だが咲薇の気持ちなど関係なく、真朧は無抵抗な綺夜羅に拳を振りかぶる。
『ダメや!!』
何がどうなっているのかは分からないが、咲薇が叫ぶとここへ吸い込まれた時とは逆に暗闇が晴れていき、金縛りが解けたかのように自分の体に戻っていた。咲薇は寸前の所で手を止めた。
『…よぉ、咲薇』
綺夜羅には真朧と咲薇が入れ替わったのが分かったらしい。
『…やぁ、綺夜羅。無茶しすぎや』
『何言ってんだよ。言ったろ?信じるって』
綺夜羅が痛々しい顔で笑いかけると咲薇は嬉しそうな、でも悲しそうな顔をした。
『ありがとう…綺夜羅…』
落ちていたナイフを拾うと自分の腹に向けてそれを振りかぶった。
『あっ!!』
咲薇はおもいきり自分の体に向けてナイフを振り下ろした。
彼女は死ぬ気だった。