第136話 再会の日を夢見て

文字数 1,357文字

 咲薇ちゃんはあの後、正式に逮捕されました。ただ、担当の刑事の松本さんの計らいで自首ということで話を進めてくれているそうです。

 自首ということが認められると刑事罰の場合によっては減刑されるという法律もあるみたいで、減刑されると死刑が無期懲役に、無期懲役が有期懲役に、有期懲役は刑期を最高で2分の1にまで減らされるということらしいです。

 警察が捜査で何も分かっていなかったことや、証拠が1つもないという中で自首をしたという点は咲薇ちゃんにとって少なくとも情状酌量が見込まれる大きなポイントだそうです。

 そして肝心な二重人格についての問題ですが、色々な鑑定や面接をされた結果、認められるということになりました。

 それには時間がかかりました。

 イデアさんが有名な弁護士さんたちを咲薇ちゃんの為に雇ってくれたことや、同じ二重人格の疎井さんが協力してくれたことにより、なかなか認められないケースだったのですが。

 咲薇ちゃんの中のもう1人、真朧さんが咲薇ちゃんと実際に入れ替わったり(それが1番難しかったみたいです…)

 疎井さんも妹さんと入れ替わったり、疎井さんがわざわざ自分の生まれや過去、今回それが発覚した経緯を自ら打ち明けたことなどから、婚約者を殺された被害者の証言というのがやはり大きかったようで、咲薇ちゃん自身は何もしていないということが認められたのです。

 あたしは疎井さんが協力してくれたことが意外でした。

 それから、叶泰さんがその前にチームを抜ける為に暴行を受けていたこともあり、真朧さんが刺したことが直接の原因だったとしても本当にそれだけで亡くなったのかということも争われ、真朧さんに問われる罪も殺人ではなく傷害致死ということになりました。

 殺人ではなく傷害致死になると同じ人の亡くなってしまった事件でも刑の重さもかなり変わってくる上に、咲薇ちゃんには更生の余地があるということになり改めて未成年として扱われることになりました。

 なので検察庁に事件が送られ大人と同等の裁判をするのではなく、少年犯罪として家庭裁判所によって処分を決められるということでした。

 咲薇ちゃんの審判(成人で言う裁判)にはあたしたちも出席しました。

 結果は中等少年院送致で期間は1年だそうです。

 咲薇ちゃんは最後まで深々と頭を下げていました。

 綺夜羅ちゃんはそれを見て号泣していました。

 咲薇ちゃんには前科を付けず、なるべく早く社会復帰をできるようにとこれからカウンセリングなどを受けて、もう1人の自分と向き合っていくみたいです。

 綺夜羅ちゃんは時間を作っては大阪まで面会に行っています。あたしもこの前一緒に行ってきました。

 咲薇ちゃんが寂しくないようにと本人は言っていたのですが、掠ちゃんは

『あいつが寂しいんだと思うよ』

 と言って笑っていました。

 そういえば咲薇ちゃんの愛車のCXと愛猫のカナちゃんは今、咲薇ちゃんの家に来ています。

 咲薇ちゃんからのお願いということで綺夜羅ちゃんが喜んで引き受けたとのことでした。

『あったく面倒見なきゃいけねぇ奴が増えて大変だったらありゃしねぇよ』

 そう言いながらも嬉しそうで、特にカナちゃんにはデレデレだそうです。

 綺夜羅ちゃんもあたしたちも咲薇ちゃんが早く帰ってくるのを今から楽しみにしています。
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