第103話 日雇いのアルバイト
文字数 1,361文字
龍玖は縁の墓にいた。墓の周りの草を抜いたり掃除をして墓石まで綺麗に拭き1人手を合わせていた。
すると携帯が鳴ったので伴だと思った。まだそれ以外この番号を知る者はいなかったからだ。だが意外にも電話は知らない番号からだった。
『はい…』
龍玖は一先ず電話に出た。
『……お前さ、あいつが死んだ時どう思ったんだ?』
声の主が神楽であることに気づいて龍玖は驚いてしまったが、すぐに自分を落ち着かせた。
『…信じられなかった。俺のせいだと思ったし、今も思ってる』
『あいつ、死ぬ時何を考えたと思う?どういう気持ちだったか分かるか?』
神楽の声はこの前のように憎悪に満ちたものではなかった。
『それは…死ぬことが怖いとか、痛くてもう嫌だとか、そんなことを思っていたかは分からないけど。ただ1つだけ言えるのは、お前のことだけが心残りだったと思う』
『それじゃなんも分かんねぇよ…』
龍玖は神楽が何を知りたがっているのか分からなかった。
『なぁ絆。お前、これからどうするとか考えてるのか?』
『どうするも何もあたしゃ忙しいんでね。特に何も考えてなんかないよ』
『そっか…なんかやりたいこととかないのか?』
『やかましいねぇ。あんた聞いてんのかい?あたしは店も持ってるし覇女の顔として忙しい毎日を送ってるんだよ』
『縁がさ、あいつは優しくて面倒見がいいから、学校行かせて保育士にさせてぇって言ってたんだ。まぁ、今が忙しくて他にやりたいことがあんなら仕方ないけど、俺はあいつがそう言うなら何かできることをさせてほしいと思ってたんだ』
神楽はそんな話1度も聞いたことがなかった。
『あたしが保育士?』
思わず鼻で笑ってしまった。
『ははは、兄ともあろう者が何言ってんだかね。このあたしが保育士なんて、務まる訳ないじゃないか。ガキなんてひっぱだいて泣かせちまうよ』
『そうか?俺は縁の気持ち、分かるけどな』
『なんだって?あんたがあたしの何を分かるって言うんだよ。ふざけやがって。電話なんてしなきゃよかったよ、じゃあな…』
神楽は言おうと思っていたことがなかなか出てこず、自分自身にイライラしながらそれでもそれを声にした。
『お前は最後に見れなかっただろうから教えてやる。あいつは最後笑ってた。死んじまったくせに、全然満足そうな顔してたんだ。あたしにはそれが理解できなかった…』
それを聞いて龍玖は神楽が今も悲しみと戦っているのだということを改めて見たような気がした。
そしてそんな縁の顔が、まるでつい今見たことのように頭に浮かんできてしまった。
『…そうか…ありがとう。教えてくれて…なんだかそれが想像できちまったよ』
最後に龍玖は言った。
『絆。お前にも分かるさ。だからお前も、仲間を大切にな』
『うるせぇよ、バーカ』
そう言って神楽は電話を切った。
『あら、お出掛けかしら?』
横浜駅の新幹線のホームに息を切らして現れた神楽に、伴はそう声をかけた。
汗をこれでもかという程垂らし、こんな姿を見られて恥ずかしかったが、何より約束もしていないのに伴が自分を待っていたらしいことに驚いていた。
『…ふふ。あぁ、ちょっと日雇いのアルバイトにね。あたしは嫌なんだけどね、どーーしてもあたしじゃなきゃダメな仕事らしいんだ』
照れを隠すように神楽が言い終わると、2人は互いに吹き出し笑い合った。
すると携帯が鳴ったので伴だと思った。まだそれ以外この番号を知る者はいなかったからだ。だが意外にも電話は知らない番号からだった。
『はい…』
龍玖は一先ず電話に出た。
『……お前さ、あいつが死んだ時どう思ったんだ?』
声の主が神楽であることに気づいて龍玖は驚いてしまったが、すぐに自分を落ち着かせた。
『…信じられなかった。俺のせいだと思ったし、今も思ってる』
『あいつ、死ぬ時何を考えたと思う?どういう気持ちだったか分かるか?』
神楽の声はこの前のように憎悪に満ちたものではなかった。
『それは…死ぬことが怖いとか、痛くてもう嫌だとか、そんなことを思っていたかは分からないけど。ただ1つだけ言えるのは、お前のことだけが心残りだったと思う』
『それじゃなんも分かんねぇよ…』
龍玖は神楽が何を知りたがっているのか分からなかった。
『なぁ絆。お前、これからどうするとか考えてるのか?』
『どうするも何もあたしゃ忙しいんでね。特に何も考えてなんかないよ』
『そっか…なんかやりたいこととかないのか?』
『やかましいねぇ。あんた聞いてんのかい?あたしは店も持ってるし覇女の顔として忙しい毎日を送ってるんだよ』
『縁がさ、あいつは優しくて面倒見がいいから、学校行かせて保育士にさせてぇって言ってたんだ。まぁ、今が忙しくて他にやりたいことがあんなら仕方ないけど、俺はあいつがそう言うなら何かできることをさせてほしいと思ってたんだ』
神楽はそんな話1度も聞いたことがなかった。
『あたしが保育士?』
思わず鼻で笑ってしまった。
『ははは、兄ともあろう者が何言ってんだかね。このあたしが保育士なんて、務まる訳ないじゃないか。ガキなんてひっぱだいて泣かせちまうよ』
『そうか?俺は縁の気持ち、分かるけどな』
『なんだって?あんたがあたしの何を分かるって言うんだよ。ふざけやがって。電話なんてしなきゃよかったよ、じゃあな…』
神楽は言おうと思っていたことがなかなか出てこず、自分自身にイライラしながらそれでもそれを声にした。
『お前は最後に見れなかっただろうから教えてやる。あいつは最後笑ってた。死んじまったくせに、全然満足そうな顔してたんだ。あたしにはそれが理解できなかった…』
それを聞いて龍玖は神楽が今も悲しみと戦っているのだということを改めて見たような気がした。
そしてそんな縁の顔が、まるでつい今見たことのように頭に浮かんできてしまった。
『…そうか…ありがとう。教えてくれて…なんだかそれが想像できちまったよ』
最後に龍玖は言った。
『絆。お前にも分かるさ。だからお前も、仲間を大切にな』
『うるせぇよ、バーカ』
そう言って神楽は電話を切った。
『あら、お出掛けかしら?』
横浜駅の新幹線のホームに息を切らして現れた神楽に、伴はそう声をかけた。
汗をこれでもかという程垂らし、こんな姿を見られて恥ずかしかったが、何より約束もしていないのに伴が自分を待っていたらしいことに驚いていた。
『…ふふ。あぁ、ちょっと日雇いのアルバイトにね。あたしは嫌なんだけどね、どーーしてもあたしじゃなきゃダメな仕事らしいんだ』
照れを隠すように神楽が言い終わると、2人は互いに吹き出し笑い合った。