第67話 白狐を追え

文字数 1,065文字

 それから一同は綺夜羅の部屋の前で鶴を折り続けていた。暴走愛努流とチーム綺夜羅のメンバーはその中ですっかり打ち解け、みんなの祈りを込めた鶴はみるみる内に羽を広げ重なっていった。

 だが、まだ静かなそんな朝の病院に悪夢の爆音が突然鳴り響いた。

「ブゥォン!!ブゥォンウォン!!」

 ただの迷惑な騒音でしかないその音は、掠や燃、旋と珠凛を震撼させた。

『この音…』

『綺夜羅のCBRだ…』

『え!?』

 綺夜羅の単車はまだ例の廃工場に置いたままになっているはずだった。訳も分からず掠が走りだし、それに続いて全員急いで外に走り出た。

 すると病院を1歩出た目の前の道路の車線のど真ん中で、狐の面を被った人物がCBR400Fに跨がりながらこちらを見ていた。あれは間違いなく綺夜羅の単車だ。

『…んなんであんたが、それに乗ってるの?ゆ…許せない』

 掠は怒りのあまり震えていた。

『殺してやる!!』

 掠は向かってくる車も関係なく白狐めがけて走っていった。しかし白狐は単車を発進させ走りだした。

『待て!!』

 掠はすぐにKHに乗りこむとキックを一蹴りしエンジンをかけ追いかけていってしまった。

『掠!』

 燃がそれを更に追おうとすると蘭菜が声をあげた。

『待って!』

 蘭菜は手を広げ一呼吸置いた。

『追うべきじゃないわ。わざわざこんな所に来て、何か企んでいるのは間違いないわ』

『でも掠が…』

 燃が泣きそうな顔で言うと咲薇が1歩前に出た。

『あたしが追いかける。みんなはこの辺分からんやろ。それに、あいつの狙いはあたしかもしれへん』

『それにしても1人はダメね。玲璃、麗桜、一緒に行ってくれる?』

『あったりめーよ。おい誰か、単車貸しな』

 玲璃が待ってましたと前に出てくるともう1人の金髪ショートカットが前に出た。

『待って。だったらあたしも一緒に行く』

 掠が心配というよりは白狐に我慢ならないという感じで旋が名乗り出た。

『どっちかあたしのケツ乗んなよ』

 旋は単車に跨がった。それを見て珠凛も自分の単車に向かって歩きだした。

『私も行くわ。数のことも気になるし』

『じゃああたしも行くよ!』

 燃も後に続こうとしたが珠凛がそれを止めた。

『燃は何かあった時の為に残って』

『でも…』

『私たちが動いたら単車は燃のバブしか残らないの。もしもの時の為に単車は1台でも残しとかないと。だからあなたは綺夜羅の側にいてあげて』

 燃はみんなが心配だったが珠凛に言われてはうなずくしかなかった。

『大丈夫だ。すぐ帰ってくんよ』

 咲薇の後ろに玲璃。旋の後ろに麗桜。そして珠凛の5人で白狐と掠の後を追うことになった。
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