第72話 戦場の大阪
文字数 2,062文字
『あーー……』
まだ夜が明ける前に病院を出ていったものの、結局白狐に出会えないまま数は朝を迎えていた。
綺夜羅を斬られたことへの怒りはおさまらないが眠さは限界になり、ここ2時間程座りこんだまま寝てしまっていて、やっと起きた所だった。
まず自分がどこにいるのか分からないので携帯で地図アプリを広げるも、どこへ向かえばいいのかさっぱりだ。
『あ~~……旅館どこだっけなぁ~…』
カッコつけて止められたのも聞かず飛び出してきてしまったので自分から仲間たちには連絡しづらい。
だが意外にも数のいる場所は駅周辺で、本人はそんなこと知るよしもなかったが散々走り回った挙句、病院まであと1歩の所までは来ていた。
その、あとわずかな距離がここで新たな不運を招く形になってしまうとは、さすがに誰も予想していなかった。
画面の中の地図とにらめっこしながら溜め息をつく数の周りを制服を着た5人の女子高生が囲んでいた。
『なんだよ。なんか用か?』
数は気にせず言ったが目の前に立った女の動きをなんとなく察知した。
『うぉっ!』
予告もなくいきなり殴りかかってきた。数はなんとかそれをかわすと5人から距離をとった。女子高生たちはニヤニヤしながら向かってくる。
『…コノヤロー。今調べものしてんだよクソが!』
数はスマホをポケットにしまった。
『まぁ、いいぜ。かかってこいよボケヤロー』
相手は5人いるが殴りかかってきたのは前髪をゴムで縛りぴょんと立たせた茶髪の女だ。Yシャツのボタンが上から4つまで外れていて、かなり胸元を見せている。目つきがいやらしく男にすぐ股を開きそうな肌の黒いギャルだ。
どうやらかかってくるのは彼女だけらしい。続けてギャルの女は殴りかかってきた。数はそれを腕で受けると代わりに1発拳を打ち返した。
『おぉっ!!』
『ふぅ~!!』
数が打ち返したのを見て周りの4人は興奮したように声をあげた。2人がやり合うのを見て楽しんでいるようだ。
『なんや、思てたよりやるやん。槐 !こいつあたし1人でやってえぇか?』
『やれんのやったらやってみぃや』
槐と呼ばれた女はギャルの女をおちょくるように言った。天然か自分でかけたのか短髪の茶髪はパーマがかかっていて捻れ、目つきや声の出し方まで1番気に入らない女だ、と数は思っていた。
ギャルの女はまたかかってくる。いかにも遊び人のような外見とは裏腹にケンカ慣れしているのが動きで分かる。少なくとも雑魚ではない。
だが5人いるのに1人で十分と思われているらしいことが数にも火をつけた。
『ほら行くで!』
『ちっ、舐めやがって』
1発パンチをもらう代わりにつかみかかると力任せに投げ飛ばした。
『やるやん、投げよった』
『見かけより力あんねんな』
4人のギャラリーは盛り上がっている。まるでスポーツ観戦でもしているかのように楽しそうに騒いでいる。
ギャルの女は立ち上がると首を左右に鳴らし、また向かってきた。
『ちっ、しぶとそうだな』
数は姿勢を低くしてまたつかみかかろうとしたが今度は相手もそれをさせないように早い連続攻撃で攻め続けた。なかなか簡単につかませてはもらえない。
『ちぇっ、こんな所で道草食ってる場合じゃねぇのによ。くそったれめ』
『そう言うなや。こっちはお前に用があんねん』
『だから何用だよ!』
『お前、白狐の仲間やろ。そいつ呼べ』
『は?何言ってんだ?』
『とぼけんなや。湘南ナンバーの単車に乗って走っとんの色んな奴が見てんねん。知らんなんて言わせへんで』
(あ?どういうことだ?)
数は知るはずもなかったが次の言葉で全て分かった。
『湘南ナンバーのCBRや。お前の仲間やろ?』
(ちっ、そういうことか。綺夜羅のCBRだな?チクチョウめ!)
そこで槐という女が立ち上がった。
『交代や』
言われてギャルの女は心外そうな顔をした。
『え?まだやられてないで』
『代われ』
槐という女に言われるとギャルの女は不満そうに下がっていった。
『おい、チャンスやるわ。あたしに勝てたら見逃したるぞ。死ぬ気できーや』
言いながら余裕の手招きをかますと当然数は頭にきた。
『舐めてんじゃねーぞ!』
1発で決めてやろうと後ろからつかみかかりバックドロップにいこうとすると「ズンッ!」と鈍い音をたてて数の頭に槐の肘が叩きこまれた。
数は激痛に頭を抱えて地面に転がりこんだ。槐はすかさずそこを蹴りまくっていく。
『はっはは!なんや弱いのう。ガッカリや、このクズが!』
そのまま数が防ぐことをやめ動かなくなるまでそれは続いた。
『1つ聞いとくぞ。まさかお前の仲間に銀髪のけったいな女おらんやろな?』
駅で豹那の髪にガムを付けたのは何を隠そうこの槐だった。
しかし数はすでに気を失っている。
『なんやもう寝とんのかい。しょーもな。もうえぇわ』
槐たちは数をそのままにして歩きだしていった。
『もっと強い奴とやりたいわ~』
大阪の街は火薬の匂いでいっぱいだ。火花散れば爆発する。それは夜空に咲く花火などではなく仕掛けられた地雷や爆弾。
大阪の街が戦場と化す予兆とも言えた。
まだ夜が明ける前に病院を出ていったものの、結局白狐に出会えないまま数は朝を迎えていた。
綺夜羅を斬られたことへの怒りはおさまらないが眠さは限界になり、ここ2時間程座りこんだまま寝てしまっていて、やっと起きた所だった。
まず自分がどこにいるのか分からないので携帯で地図アプリを広げるも、どこへ向かえばいいのかさっぱりだ。
『あ~~……旅館どこだっけなぁ~…』
カッコつけて止められたのも聞かず飛び出してきてしまったので自分から仲間たちには連絡しづらい。
だが意外にも数のいる場所は駅周辺で、本人はそんなこと知るよしもなかったが散々走り回った挙句、病院まであと1歩の所までは来ていた。
その、あとわずかな距離がここで新たな不運を招く形になってしまうとは、さすがに誰も予想していなかった。
画面の中の地図とにらめっこしながら溜め息をつく数の周りを制服を着た5人の女子高生が囲んでいた。
『なんだよ。なんか用か?』
数は気にせず言ったが目の前に立った女の動きをなんとなく察知した。
『うぉっ!』
予告もなくいきなり殴りかかってきた。数はなんとかそれをかわすと5人から距離をとった。女子高生たちはニヤニヤしながら向かってくる。
『…コノヤロー。今調べものしてんだよクソが!』
数はスマホをポケットにしまった。
『まぁ、いいぜ。かかってこいよボケヤロー』
相手は5人いるが殴りかかってきたのは前髪をゴムで縛りぴょんと立たせた茶髪の女だ。Yシャツのボタンが上から4つまで外れていて、かなり胸元を見せている。目つきがいやらしく男にすぐ股を開きそうな肌の黒いギャルだ。
どうやらかかってくるのは彼女だけらしい。続けてギャルの女は殴りかかってきた。数はそれを腕で受けると代わりに1発拳を打ち返した。
『おぉっ!!』
『ふぅ~!!』
数が打ち返したのを見て周りの4人は興奮したように声をあげた。2人がやり合うのを見て楽しんでいるようだ。
『なんや、思てたよりやるやん。
『やれんのやったらやってみぃや』
槐と呼ばれた女はギャルの女をおちょくるように言った。天然か自分でかけたのか短髪の茶髪はパーマがかかっていて捻れ、目つきや声の出し方まで1番気に入らない女だ、と数は思っていた。
ギャルの女はまたかかってくる。いかにも遊び人のような外見とは裏腹にケンカ慣れしているのが動きで分かる。少なくとも雑魚ではない。
だが5人いるのに1人で十分と思われているらしいことが数にも火をつけた。
『ほら行くで!』
『ちっ、舐めやがって』
1発パンチをもらう代わりにつかみかかると力任せに投げ飛ばした。
『やるやん、投げよった』
『見かけより力あんねんな』
4人のギャラリーは盛り上がっている。まるでスポーツ観戦でもしているかのように楽しそうに騒いでいる。
ギャルの女は立ち上がると首を左右に鳴らし、また向かってきた。
『ちっ、しぶとそうだな』
数は姿勢を低くしてまたつかみかかろうとしたが今度は相手もそれをさせないように早い連続攻撃で攻め続けた。なかなか簡単につかませてはもらえない。
『ちぇっ、こんな所で道草食ってる場合じゃねぇのによ。くそったれめ』
『そう言うなや。こっちはお前に用があんねん』
『だから何用だよ!』
『お前、白狐の仲間やろ。そいつ呼べ』
『は?何言ってんだ?』
『とぼけんなや。湘南ナンバーの単車に乗って走っとんの色んな奴が見てんねん。知らんなんて言わせへんで』
(あ?どういうことだ?)
数は知るはずもなかったが次の言葉で全て分かった。
『湘南ナンバーのCBRや。お前の仲間やろ?』
(ちっ、そういうことか。綺夜羅のCBRだな?チクチョウめ!)
そこで槐という女が立ち上がった。
『交代や』
言われてギャルの女は心外そうな顔をした。
『え?まだやられてないで』
『代われ』
槐という女に言われるとギャルの女は不満そうに下がっていった。
『おい、チャンスやるわ。あたしに勝てたら見逃したるぞ。死ぬ気できーや』
言いながら余裕の手招きをかますと当然数は頭にきた。
『舐めてんじゃねーぞ!』
1発で決めてやろうと後ろからつかみかかりバックドロップにいこうとすると「ズンッ!」と鈍い音をたてて数の頭に槐の肘が叩きこまれた。
数は激痛に頭を抱えて地面に転がりこんだ。槐はすかさずそこを蹴りまくっていく。
『はっはは!なんや弱いのう。ガッカリや、このクズが!』
そのまま数が防ぐことをやめ動かなくなるまでそれは続いた。
『1つ聞いとくぞ。まさかお前の仲間に銀髪のけったいな女おらんやろな?』
駅で豹那の髪にガムを付けたのは何を隠そうこの槐だった。
しかし数はすでに気を失っている。
『なんやもう寝とんのかい。しょーもな。もうえぇわ』
槐たちは数をそのままにして歩きだしていった。
『もっと強い奴とやりたいわ~』
大阪の街は火薬の匂いでいっぱいだ。火花散れば爆発する。それは夜空に咲く花火などではなく仕掛けられた地雷や爆弾。
大阪の街が戦場と化す予兆とも言えた。