第117話 伝染病のように

文字数 858文字

『あれ?おやおや、おやおやおやおや。なんだいお前らそのザマは。あっはっは!え?哉原。お前ともあろう者が2対1でその有り様かい?』

 樹と琉花の所に神楽絆がたどり着いた。

『あれあれ。なんだ隣にゃ狼さんとこの七条じゃないか。ん?あっちにいるのは狼さんかい?参ったねぇ、3人揃ってみっともないったらありゃしない』

『か、神楽。お前どうしてこんなとこに』

 樹も琉花もまずこんな所に神楽がいることに驚きを隠せなかった。

『いやいや、あたしはアルバイトさ。どっかのお人好しのように友達を守りに行くなんて、そんな柄じゃないんでね。まぁ、あたしの勤め先はここでよさそうだね。ほれ、どいてな』

 樹と琉花はそう言われ戸惑った。眩の強さははっきり言って想像をはるかに超える。

『ちょ、ちょっと、いくらあんたでも…』

『あーあー分かった分かった。どいてどいて』

 琉花が意見しようとするのを手で遮ると眩の方を見据えた。そして目が合うと笑って言った。

『あんたたち、やる前から負けてるよ。あいつの目ぇ見てごらん?たとえ今日死のうと譲れないって目だ。ヘラヘラしてやがるけどね。ふふ、いい目だ』

 神楽は眩の方へ歩いていった。

『お、なんや新しい助っ人か?別に3人がかりでもえぇねんで』

『ふふ。やめてくれよ、カッコ悪い』

 そう言うと神楽は両手を腰にあて少し下からにらみつけるようにして言った。

『あたしが神奈川最大にして最強の暴走族、覇女の頭張ってる神楽っつーもんだよ。運が悪かったね、1番強い奴が相手で』

『1番やと?ほーお、ほなあんたが関東一てことか?』

『ま、そーゆーことになるね』

『ホンマか!?ほんなら負けられへんな。関西一と関東一、どっちが強いか、勝負や』

 神楽対眩のタイマンが始まった。




 バカ兄貴…見てるのかい?

 あんたの親友はあんたと同じこと言ってたよ。

 そんでもってその妹もその周りも、まるで伝染病のようにおんなじこと言うんだ。

 ホント、どいつもこいつもバカだねぇ。



 神楽は超えた。兄の死を。

 そしてどうやら彼女もその伝染病に感染してしまったようである。
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