第122話 思い出せない

文字数 321文字

『風矢咲薇。忘れたとは言わせない。あなたはあの日叶泰くんの所に行った。そうよね?』

 みんな何も言葉を発さずに咲薇と疎井冬を交互に見ていた。

『…嘘や。何言うてんねん。あたしが叶泰の所に行ったやと?』

 そんなはずはなかった。咲薇は少なくとも叶泰が行ってしまってから結局連絡がなく、次の日のニュースで叶泰の死を知ったのだ。それどころか自分が叶泰を殺した?

 そんなことを言い出され咲薇は完全にパニックに陥っていた。

(だって、あたしはあの日寝てしまったはずや。起きてニュースで叶泰が死んだんを知ったんやぞ。何を言うてんねん…でも、あたしはなんでそんな大事な時に寝てしまったんや?さっぱりや…何も思い出せへん。あたしはあの日あの後、何をしとったんや…)
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