第134話 とある場所

文字数 1,143文字

『こんちわー。6人なんですけどいいすか?』

『いらっしゃいませ。どうぞ好きなとこ座ってください。今丁度落ち着いたとこなんですよ』

 出迎えてくれたのは綺麗な女性だった。まだ30代半ばから40手前と思われるがスタイルがよく、彼女の面影が見て取れた。

『えっとね、あたしはね、カツ丼!』

『あたしもー』

『私も』

『みんなそれで!』

 綺夜羅たちはとある食堂を訪れていた。6人が注文を終えると続いて客が入ってきた。

『すいませーん。えーと…13人入れますか!?』

『あ、いらっしゃいませ。どうぞ、お好きなとこ座ってください』

『はい!ねぇみんな~!入れるって~!』

 後を追って愛羽たちが入ってきた。まだ昨日の今日でみんなあちこち痣だらけだ。

 あれから病院では玲璃が1人目を覚ましていた。誰もいない上連絡もつかないので置いて帰られたと勘違いして泣きそうになっていた所にボロボロの愛羽たちが帰ってきた。

 玲璃のしょげた顔を見て全員腹を抱えて笑っていたが、玲璃は今回結局出番がなくやられただけで終わってしまって激おこだ。

 なので玲璃だけはピンピンしている。

『チクショウ、なんだよ全く。あと1日遅けりゃあたしも参戦できたのにな~』

『まだ言ってるの?玲ちゃん』

『誰のおごりだい?毎度人のこといいようにこき使いやがって。あたしの人件費いくらだと思ってやがるんだ。悪いけどあたしゃ飲むからね。お姉さんビールちょうだい!』

『お、神楽、あたしも付き合うぜ。こっちも生くださーい!』

『じゃあ私も付き合おうかしら。緋薙、あなたは?』

『あたしに気安く話しかけるんじゃないよ。馴れ馴れしい…』

『まぁ!あなたって本当に素直じゃないのね!』

『そうだぜ緋薙。友達なんだから仲良くしろよ~』

『哉原、てめぇ表出なよ』

 神奈川4大暴走族の総長たちはなんだかんだ仲良しである。

 開口一番文句を言った神楽も機嫌はよさそうだ。

『えーと、あたし何にしよっかなー。しょうが焼定食も美味しそうだし、トンカツ定食も美味しそー』

 愛羽は何にするか決められずにいた。

『愛羽、知らねーのか?ここに来たらまずカツ丼食わねーとダメなんだぞ』

 綺夜羅が言うと愛羽は何も疑わず即決した。

『じゃああたしカツ丼』

『あたしも!』

『私も!』

『俺も!』

『僕も!』

『じゃあ、みんなカツ丼で』

 最後に綺夜羅がどうしてもということで今日は風矢食堂に来ていた。

 特に何をしにきた訳ではない。ただ食べにきただけだ。

 咲薇が生まれ育った場所で、咲薇が美味しいと言った物を食べてみたかったのだ。

『はい、カツ丼お待たせしました』

『えー!?ウマソー!!』

『玉子が…輝いてる』

『早く食べよーぜ綺夜羅』

『よっしゃ、いただきまーす!』

『いただきまーす!』

 綺夜羅に続いてみんなが声を揃えた。

『ん!…ウマイ!!』
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