第70話 バカが移る
文字数 1,152文字
『おい運転手さん。駅に向かってくれ』
豹那と瞬はタクシーに乗ると豹那の意向で駅に戻ることになった。
『あなたまさかさっきの子たちの所に戻るつもり?』
『ふふ。まずは人通りの多い所に行くのが得策じゃないか』
『もう…』
瞬は困り顔で溜め息をついたが駅に戻ると女子高生たちの姿はもうなかった。
『ちっ、運のいい奴だ』
豹那はもちろんやる気満々だった訳だ。
『でもまぁここら辺にいて街の様子を窺うのもいいかもね』
瞬が前向きに言ってすぐそこの壁によりかかり、豹那はその手前に座りこむとタバコを取り出し火をつけ、おもいきり煙を吐いた。
『あ、ちょっと!こっちに煙吐かないでよ!』
『あ?あぁ、悪い悪い…あれ?あんたタバコは吸わないのかい?』
『吸わないよ。やめたもん』
なんでもないことのように話すが2人はまだ18歳だ。
『やめた?なんだい、この歳でもうガンにビビったのかい?』
『違くて!…あ、いや…それもあるのかな?』
『?…』
一体お前は何言ってやがるんだい?という顔をした豹那に瞬は一呼吸おいて話し始めた。
『病院にね、あれから毎日通ってるんだけど、やっぱり今タバコの匂いとかってすごい気にされるんだ。毎日来てるあたしがタバコ臭くて不良っぽい格好してたら、きっと周りの人にも良く思ってもらえないんだろうなって思ったら周りの目が気になってきちゃってさ。泪のとこ来てるあいつは暴走族の総長だって言われたりしたら評判悪いし、あたしがタバコやめて普通の格好して周りの人に良く思ってもらえたら泪のことも良く思ってもらえるのかなって思ったら、やめようって思えて。寝てる泪にも匂いが分かってたら嫌だし、副流煙とかも吸わせたくないし、あたしも泪が目覚めるまで何年かかっても、何十年かかっても元気で待ってたいから。だからやめたの』
『へぇ…それは素晴らしい決断をしたね。つまりあれかい?あんたにもどっかのバカのバカが移っちまったってことかい?』
『バ、バカはひどいでしょ!?』
豹那は呆れた顔をして目も合わそうとしない。少し間を空けてから瞬は話を続けた。
『あたしね、自分が1番強いと思ってたの。ケンカも走りも、東京連合ってチームも。だけどね、なんてゆーのかな?違ったの。あたしは自分がすごく強いって安心したいだけだったの。でもね、あたしが本当に欲しかったのはそんな強さじゃなかったんだ。それをあの子たちはあたしに教えてくれたんだよ。』
『ふふ…そういうのをバカが移るって言うんだよ。バーカ』
『じゃあ、あなたはどうなの?あなたもきっと何か思わされて、あの時あの場所に現れたんでしょ?』
『さぁね。理由なんて忘れたよ』
豹那はきっと本音など言わないだろうが、瞬は豹那が「あんたにも」と言ったのをちゃんと聞いていた。
しかし彼女はそれをあえて突っこまなかった。
豹那と瞬はタクシーに乗ると豹那の意向で駅に戻ることになった。
『あなたまさかさっきの子たちの所に戻るつもり?』
『ふふ。まずは人通りの多い所に行くのが得策じゃないか』
『もう…』
瞬は困り顔で溜め息をついたが駅に戻ると女子高生たちの姿はもうなかった。
『ちっ、運のいい奴だ』
豹那はもちろんやる気満々だった訳だ。
『でもまぁここら辺にいて街の様子を窺うのもいいかもね』
瞬が前向きに言ってすぐそこの壁によりかかり、豹那はその手前に座りこむとタバコを取り出し火をつけ、おもいきり煙を吐いた。
『あ、ちょっと!こっちに煙吐かないでよ!』
『あ?あぁ、悪い悪い…あれ?あんたタバコは吸わないのかい?』
『吸わないよ。やめたもん』
なんでもないことのように話すが2人はまだ18歳だ。
『やめた?なんだい、この歳でもうガンにビビったのかい?』
『違くて!…あ、いや…それもあるのかな?』
『?…』
一体お前は何言ってやがるんだい?という顔をした豹那に瞬は一呼吸おいて話し始めた。
『病院にね、あれから毎日通ってるんだけど、やっぱり今タバコの匂いとかってすごい気にされるんだ。毎日来てるあたしがタバコ臭くて不良っぽい格好してたら、きっと周りの人にも良く思ってもらえないんだろうなって思ったら周りの目が気になってきちゃってさ。泪のとこ来てるあいつは暴走族の総長だって言われたりしたら評判悪いし、あたしがタバコやめて普通の格好して周りの人に良く思ってもらえたら泪のことも良く思ってもらえるのかなって思ったら、やめようって思えて。寝てる泪にも匂いが分かってたら嫌だし、副流煙とかも吸わせたくないし、あたしも泪が目覚めるまで何年かかっても、何十年かかっても元気で待ってたいから。だからやめたの』
『へぇ…それは素晴らしい決断をしたね。つまりあれかい?あんたにもどっかのバカのバカが移っちまったってことかい?』
『バ、バカはひどいでしょ!?』
豹那は呆れた顔をして目も合わそうとしない。少し間を空けてから瞬は話を続けた。
『あたしね、自分が1番強いと思ってたの。ケンカも走りも、東京連合ってチームも。だけどね、なんてゆーのかな?違ったの。あたしは自分がすごく強いって安心したいだけだったの。でもね、あたしが本当に欲しかったのはそんな強さじゃなかったんだ。それをあの子たちはあたしに教えてくれたんだよ。』
『ふふ…そういうのをバカが移るって言うんだよ。バーカ』
『じゃあ、あなたはどうなの?あなたもきっと何か思わされて、あの時あの場所に現れたんでしょ?』
『さぁね。理由なんて忘れたよ』
豹那はきっと本音など言わないだろうが、瞬は豹那が「あんたにも」と言ったのをちゃんと聞いていた。
しかし彼女はそれをあえて突っこまなかった。