第127話 般若の業火

文字数 943文字

 ドーピングを使用した般若娘たちと伴たちの勝負はやっとその行方が見えてきた。ついに槐たちのタイムリミットがきたのだ。

 新型超性能ステロイドにより作られた異常な程の筋肉が急激に緩み、想像を絶する全身の筋肉痛に加え鎮痛剤のおかげで感じなくなっていた蓄積された全てのダメージが一気に体を襲う。

『痛い…なんやいきなり…体中が痛いで』

『あたしもや…立ってられへん』

 さっきまであんなに威勢のよかった5人が体を押さえてうずくまり、やがて倒れこみ尋常ではない痛みを訴えた。

『へ…へへ、ざまぁみろ。いい気になってガードもしねぇでバカみてーにくらってたからだ』

 とはいえ、ギリギリだった。蘭菜も蓮華も肩で息を切らし、かろうじて立ててはいるがあと少し勝負が長引いていたら、おそらくやられていたのはこっちだっただろう。麗桜はボコボコの顔で笑っていた。

 般若娘の中でも槐は特別ツラそうにあえぎ声をあげながらもがき苦しんでいた。

 散々愛羽と豹那の攻撃をくらった上、伴にもやられたのだ。無理もないだろう。

『どうかしら。まだやる気なの?』

 さすがの般若娘たちも口から軽い言葉は出なかった。

『さすがにもう無理だろうよ。悪いな、俺たちの勝ちだ』

 麗桜がそう言うと蓮華がガッツポーズした。初めてこんな本格的にケンカをして勝ったということが余程嬉しかったのだろう。喜び飛び跳ね回った後、シャドーボクシングの真似をしていた。

 それを見て蘭菜も伴も数も、そして豹那も笑っていた。

『早くみんなを探そう』

 一同は痛む体で先へ進んでいった。





『くっそ…このまま終わらせてたまるか!!』

 槐はよろよろと立ち上がると自分たちの単車からガソリンを撒き散らし建物に火を放った。体を動かすのは相当にツラいはずだったが、もはや執念でそこら中に火をつけて回る。

『…全員、地獄に送ったるわ!!』

 槐は自分たち以外の暴走侍や陽炎朱雀の単車からもタンクを外してガソリンを撒き散らす。

『槐、これやと工場ごと燃えてまうぞ』

『そのつもりや。工場ごと燃えたらえぇねん。暴走侍も陽炎朱雀も不死鳥も、あの神奈川のクソ共も…ここで皆殺しや。焼き殺したるわ!はははは!』

 その姿はまるで本物の般若のようだった。

 他の4人はそれを見て青くなりついていけず引いてしまっていた。
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