第89話 ただそれだけ
文字数 1,550文字
『なぁな、お前何やっとんの?』
丸2日飲まず食わずで歩いて、もう歩く力もなく座りこんでいると2人の女の子に声をかけられた。
可愛らしい2人の女の子は本物の姉妹らしく、ひざを抱え座りこむ私に手を差し伸べてくれた。
『分かった。お姉、この子お腹減ったんちゃう?』
『よっしゃ!ウチすぐそこやからとりあえず行くで!』
姉の方は私と同い年で妹の子は1つ年下らしく、姉が自転車の後ろに私を乗せると猛スピードで走りだした。
2人は私を家に連れ込むなり、せっせと私の為にご飯を作ってくれた。
『でぇきたで~!熱い内に食いや!』
ご飯の上にトロトロの卵焼きが乗せられた丼物に野菜の入ったスープが用意されていた。2人は私が食べるのを待っていた。
『本当にいいんですか?』
『早よ食べーな~。冷めてまうやろ』
私が言うと姉の方が怒りだしたので私は慌てて手をつけた。
『い、いただきます!』
もう2日ぶりのご飯で、それだけでも嬉しいのに2人の作ってくれたご飯はとても美味しかった。
『どや!旨いやろ!』
『すごく美味しい…』
私がそう言うと2人はニコッとして嬉しそうに笑った。
そんな風に人が笑ってくれたのは初めてだった。私はそれが嬉しくて涙が止まらなかった。
すると2人はオロオロして
『なんや、嫌いなもん入っとったんか?』とか
『熱かったんやない?』と心配してくれた。
私は泣いて、それでもお腹が減っているので泣きながらも箸を進めると、何がそんなに面白かったのか2人はゲラゲラと笑っていた。
私も泣きながら食べながら、つられて笑ってしまっていた。
2人には私があまり言いたくない部分を伏せて自分のことや事情を打ち明けた。何も話さない訳にはいかなかったし、私にとっては命の恩人だった。それに2人は信用できそうだったし、誰かを頼らないことには生きてなどいけないのがよく分かった。
すると2人は親に相談してみると言ってくれた。
だけどこれには驚いてしまった。2人の父親はヤクザだったのだ。ヤクザと聞いて私は怖くて悪い人としかイメージがわかなかったが施設にいた大人たちより全然話の分かる人だった。
2人には母親はおらず父親がヤクザをしながら2人を食べさせているらしく、大変なはずだと思ったが嫌な顔1つ見せずいていいと言ってくれた。
私は中学校には行かなかったがその代わりいつも2人と一緒にいた。
2人と一緒にいると度々ケンカや悪いことに巻き込まれたが私が怖いと思うといつもアヤメが助けてくれた。
2人にはアヤメのことは話していなかったのできっと全て私だと信じていたと思うが、上手くアヤメと入れ替わり冬でいたりアヤメでいたりしながら私たちはいつも4人でいた。
姉の眩(まばゆ)に妹の煌(きらめ)。
2人は私を家族にしてくれた。
15歳。中学3年の年から2人の父親にお願いして私は彼が経営している飲み屋、俗に言うキャバクラでアルバイトをさせてもらっていた。
キャバクラでバイトと言えば聞こえはいいが、私はとても人と話すことはできないしさすがに年齢的にも厳しいらしく、キッチンでお酒を作るなど裏方の仕事をしていた。
私はそのバイト代を迷わず貯めた。16歳になればどこでも働けるし1人暮らしだってできる。その為だ。
2人も父親もずっといていいと言ってくれたが私は16になるとお礼を言って家を出た。
嫌だった訳ではない。2人と出会えたこと、あの家で過ごせたことは私の財産だと思っている。
ただ、いつまでもいてはいけないと思っていたし少しずつ変化をしながら生きていきたかったのだ。
1人暮らしをして、私の好きなお花屋かペットショップで働いて恋愛だってしてみたかった。
そういう変化を楽しみながら普通に暮らしていけたらいいなと思っていた。
ただそれだけである。
丸2日飲まず食わずで歩いて、もう歩く力もなく座りこんでいると2人の女の子に声をかけられた。
可愛らしい2人の女の子は本物の姉妹らしく、ひざを抱え座りこむ私に手を差し伸べてくれた。
『分かった。お姉、この子お腹減ったんちゃう?』
『よっしゃ!ウチすぐそこやからとりあえず行くで!』
姉の方は私と同い年で妹の子は1つ年下らしく、姉が自転車の後ろに私を乗せると猛スピードで走りだした。
2人は私を家に連れ込むなり、せっせと私の為にご飯を作ってくれた。
『でぇきたで~!熱い内に食いや!』
ご飯の上にトロトロの卵焼きが乗せられた丼物に野菜の入ったスープが用意されていた。2人は私が食べるのを待っていた。
『本当にいいんですか?』
『早よ食べーな~。冷めてまうやろ』
私が言うと姉の方が怒りだしたので私は慌てて手をつけた。
『い、いただきます!』
もう2日ぶりのご飯で、それだけでも嬉しいのに2人の作ってくれたご飯はとても美味しかった。
『どや!旨いやろ!』
『すごく美味しい…』
私がそう言うと2人はニコッとして嬉しそうに笑った。
そんな風に人が笑ってくれたのは初めてだった。私はそれが嬉しくて涙が止まらなかった。
すると2人はオロオロして
『なんや、嫌いなもん入っとったんか?』とか
『熱かったんやない?』と心配してくれた。
私は泣いて、それでもお腹が減っているので泣きながらも箸を進めると、何がそんなに面白かったのか2人はゲラゲラと笑っていた。
私も泣きながら食べながら、つられて笑ってしまっていた。
2人には私があまり言いたくない部分を伏せて自分のことや事情を打ち明けた。何も話さない訳にはいかなかったし、私にとっては命の恩人だった。それに2人は信用できそうだったし、誰かを頼らないことには生きてなどいけないのがよく分かった。
すると2人は親に相談してみると言ってくれた。
だけどこれには驚いてしまった。2人の父親はヤクザだったのだ。ヤクザと聞いて私は怖くて悪い人としかイメージがわかなかったが施設にいた大人たちより全然話の分かる人だった。
2人には母親はおらず父親がヤクザをしながら2人を食べさせているらしく、大変なはずだと思ったが嫌な顔1つ見せずいていいと言ってくれた。
私は中学校には行かなかったがその代わりいつも2人と一緒にいた。
2人と一緒にいると度々ケンカや悪いことに巻き込まれたが私が怖いと思うといつもアヤメが助けてくれた。
2人にはアヤメのことは話していなかったのできっと全て私だと信じていたと思うが、上手くアヤメと入れ替わり冬でいたりアヤメでいたりしながら私たちはいつも4人でいた。
姉の眩(まばゆ)に妹の煌(きらめ)。
2人は私を家族にしてくれた。
15歳。中学3年の年から2人の父親にお願いして私は彼が経営している飲み屋、俗に言うキャバクラでアルバイトをさせてもらっていた。
キャバクラでバイトと言えば聞こえはいいが、私はとても人と話すことはできないしさすがに年齢的にも厳しいらしく、キッチンでお酒を作るなど裏方の仕事をしていた。
私はそのバイト代を迷わず貯めた。16歳になればどこでも働けるし1人暮らしだってできる。その為だ。
2人も父親もずっといていいと言ってくれたが私は16になるとお礼を言って家を出た。
嫌だった訳ではない。2人と出会えたこと、あの家で過ごせたことは私の財産だと思っている。
ただ、いつまでもいてはいけないと思っていたし少しずつ変化をしながら生きていきたかったのだ。
1人暮らしをして、私の好きなお花屋かペットショップで働いて恋愛だってしてみたかった。
そういう変化を楽しみながら普通に暮らしていけたらいいなと思っていた。
ただそれだけである。