第113話 死神スライダー
文字数 1,474文字
(え?)
何かが飛んできたのだ。
いつぞやに高校球児が160キロの球を投げていたがその姿を思い出してしまった。
更に言えば切れ味のいいスライダーだ。160キロの豪速球スライダーのような右フック。仮にもキックボクサーの樹が反応できなかった。
油断などしていなかった。だが1発くらっただけで樹はひざを着かされていた。
『はっ!』
そして次の瞬間には蹴り倒されていた。まるで車にでも突っ込まれたようだった。抵抗しようのない力に軽々と蹴り転がされ樹は立ち上がると無意識の内に距離を取ってしまった。
まだ、たった2発だ。
(まさか…このあたしがビビってるっていうのか?はは、ジョーダンだろ?)
『なんやおい。もう終わりか?』
相変わらず眩の調子は軽いが、樹は咲薇が言っていたことは嘘ではなかったと思わざるを得なかった。
『何言ってやがる。まだ始まったばっかじゃねぇか。おら、いくぜ』
とは言いつつも樹は慎重にしか攻めていけなかった。得意の蹴りで攻撃を組み立て、眩に隙を与えないように比較的いい蹴りを打ちこんでいくがほとんど効いている様子が見られなかった。
逆に隙を突かれたのは樹だ。蹴りのコンビネーションを見切られ、自分が蹴りを放ったのと同時に再び殴り倒されていた。
『うぅ!』
まるで鉛で殴られたようなパンチに樹は顔を押さえ這いつくばっている。
『うっ…あ…あ…くそっ…』
見ていた琉花もさすがに黙っていられず走りだし眩に向かっていく。
(この女、只者じゃない)
『おっ、仲間の助けや。えぇで、2対1でも何対1でも』
琉花は素早いフットワークで捉えられないように警戒しながらパンチを打っていった。
『うぉっ!速っ!』
しかし眩は驚くも七条琉花のパンチを動作1つでよけ、手のひらで受け止めた。
それこそ野球のボールをキャッチする位の動きで、だ。
琉花は顔をつかまれた。
『んぐ!』
『行っくで~!』
眩は琉花の顔を持ったまま走りだし、まだ座りこむ樹に向かって琉花を投げつけた。
『うぁっ!』『うぉっ!』
2人はまるでオモチャのように転がされた。
『はははは!ストライクや!』
なんという、それもどういう怪力だろう。向こう側では瞬が妹の方にかなり苦戦している。
樹も琉花も少し甘く見ていたことを痛感していた。
『おい七条…お前やめといた方がいいぞ。あいつ半端じゃねぇよ』
『あんたこそ諦めた方がいいわよ。あたしの見た感じ、勝ち目なさそうだし』
『へっ、言ってくれるじゃねーかよ。オモチャにされてたくせに』
『は!?なんですって!?誰がオモチャよ!』
『わはは!なんや仲間割れか。おもろい奴らやのぉ』
『うっせーよ!!』『うるさいよ!!』
2人は覚悟を決めて立ち上がった。
『おい、姉ちゃんの方!あたしらは今日仲間の夢取り戻しに来たんだ。悪いけど負けられねぇんだよ』
『白狐だっけ?そいつ捕まえるまではとりあえずくたばれないんだよね』
『さぁ、かかってこいよ
さぁ、かかってきなよ』
眩は白狐という言葉が出て急に真顔になり答えた。
『そういうことなら、あたしにもお前らを叩き潰す理由がある、ということや。言うとくけどな、あたしは強いぞ』
そんなことはもう分かっている。だがこの女が白狐の側であるのなら、せめて足止めだけでもしなければならない。
対して眩も冬がここに来て何をするつもりなのから分からないが、なんとしても守り抜かねばならない。だが目の前のトサカ頭とツインテールは関西最強の女を目の前にして1歩も引こうとはしない。
『…ほな、楽しませてもらおか』
死神と呼ばれた女は何故か楽しそうな顔を見せた。
何かが飛んできたのだ。
いつぞやに高校球児が160キロの球を投げていたがその姿を思い出してしまった。
更に言えば切れ味のいいスライダーだ。160キロの豪速球スライダーのような右フック。仮にもキックボクサーの樹が反応できなかった。
油断などしていなかった。だが1発くらっただけで樹はひざを着かされていた。
『はっ!』
そして次の瞬間には蹴り倒されていた。まるで車にでも突っ込まれたようだった。抵抗しようのない力に軽々と蹴り転がされ樹は立ち上がると無意識の内に距離を取ってしまった。
まだ、たった2発だ。
(まさか…このあたしがビビってるっていうのか?はは、ジョーダンだろ?)
『なんやおい。もう終わりか?』
相変わらず眩の調子は軽いが、樹は咲薇が言っていたことは嘘ではなかったと思わざるを得なかった。
『何言ってやがる。まだ始まったばっかじゃねぇか。おら、いくぜ』
とは言いつつも樹は慎重にしか攻めていけなかった。得意の蹴りで攻撃を組み立て、眩に隙を与えないように比較的いい蹴りを打ちこんでいくがほとんど効いている様子が見られなかった。
逆に隙を突かれたのは樹だ。蹴りのコンビネーションを見切られ、自分が蹴りを放ったのと同時に再び殴り倒されていた。
『うぅ!』
まるで鉛で殴られたようなパンチに樹は顔を押さえ這いつくばっている。
『うっ…あ…あ…くそっ…』
見ていた琉花もさすがに黙っていられず走りだし眩に向かっていく。
(この女、只者じゃない)
『おっ、仲間の助けや。えぇで、2対1でも何対1でも』
琉花は素早いフットワークで捉えられないように警戒しながらパンチを打っていった。
『うぉっ!速っ!』
しかし眩は驚くも七条琉花のパンチを動作1つでよけ、手のひらで受け止めた。
それこそ野球のボールをキャッチする位の動きで、だ。
琉花は顔をつかまれた。
『んぐ!』
『行っくで~!』
眩は琉花の顔を持ったまま走りだし、まだ座りこむ樹に向かって琉花を投げつけた。
『うぁっ!』『うぉっ!』
2人はまるでオモチャのように転がされた。
『はははは!ストライクや!』
なんという、それもどういう怪力だろう。向こう側では瞬が妹の方にかなり苦戦している。
樹も琉花も少し甘く見ていたことを痛感していた。
『おい七条…お前やめといた方がいいぞ。あいつ半端じゃねぇよ』
『あんたこそ諦めた方がいいわよ。あたしの見た感じ、勝ち目なさそうだし』
『へっ、言ってくれるじゃねーかよ。オモチャにされてたくせに』
『は!?なんですって!?誰がオモチャよ!』
『わはは!なんや仲間割れか。おもろい奴らやのぉ』
『うっせーよ!!』『うるさいよ!!』
2人は覚悟を決めて立ち上がった。
『おい、姉ちゃんの方!あたしらは今日仲間の夢取り戻しに来たんだ。悪いけど負けられねぇんだよ』
『白狐だっけ?そいつ捕まえるまではとりあえずくたばれないんだよね』
『さぁ、かかってこいよ
さぁ、かかってきなよ』
眩は白狐という言葉が出て急に真顔になり答えた。
『そういうことなら、あたしにもお前らを叩き潰す理由がある、ということや。言うとくけどな、あたしは強いぞ』
そんなことはもう分かっている。だがこの女が白狐の側であるのなら、せめて足止めだけでもしなければならない。
対して眩も冬がここに来て何をするつもりなのから分からないが、なんとしても守り抜かねばならない。だが目の前のトサカ頭とツインテールは関西最強の女を目の前にして1歩も引こうとはしない。
『…ほな、楽しませてもらおか』
死神と呼ばれた女は何故か楽しそうな顔を見せた。