第106話 戦場の大阪

文字数 1,296文字

 暴走侍の集合場所、廃工場では椿原萼が暴走侍全メンバーと共にやがて来るであろう敵を待っていた。

『お前らえぇな。不死鳥だろうと陽炎朱雀だろうと潰せ。ウチは全くの濡れ衣を着せられた被害者や。絶対に許すな。死なせても仕方ないと思え。それから白狐や。奴の狙いがなんであれ必ず現れるはずや。そいつだけはどんな手段を使ってでも捕まえろ。見つけたらあたしにすぐ連絡せぇ』

 萼がそこまで話し終わると単車の集団が走ってくる音が聞こえてきた。

『来よったな』

 その鳴り響く爆音を聞いただけで想像以上の台数であることが分かる。だんだん近づいてくるとその場の全ての声や音をかき消して工場の中へとやってきた。

 100台は軽くいる。およそ200人近くの大群でやってきたのは陽炎朱雀だった。

 ぞろぞろと萼たちの待ち構える工場の建物内部まで歩いてくると暴走侍たちを前に1人が歩いて萼の方へやってきた。

『お前が萼か』

 いきなり名前を呼ばれたことに妙な感じを覚えたがすぐに理解した。

『…あぁ、なるほど。お前が男寝取られたアホ女か』

『ふっ、アホ女か。それは否定できんな。ただ寝取られたなんてちゃうぞ』

『何が違うねん。まぁえぇわ。死んだアホ男のことなんてどーでもえぇ。ここに何しに来た』

 さすがの浬も萼の言葉と態度に目を細めた。もちろん萼は分かっていてやっている。

『お前らが白狐かくまってる言うのがホンマかこの目で確かめにきた。でもお前は個人的に許さんことにした。』

『なんや、怒っとんのか?そんなんやから男に騙されんねん。ははは』

 萼のどこまでもバカにした態度に陽炎朱雀たちはもう我慢ならないといった雰囲気だ。

 浬は例の槍を持ち構えた。

『暴走侍、覚悟せぇや!!』

 浬の声に合わせて陽炎朱雀たちは一斉に飛びかかっていく。暴走侍たちがそれを迎え撃つ。

 萼は木刀を持ち浬と向かい合うと右から左からと木刀を振り回し浬を追いやっていく。

『ははは!どうやアホ女!』

 萼は素早く面を狙っていく。だが浬はそれを槍で受け止めすかさず前蹴りした。

『うっ!』

 萼は蹴り飛ばされ何歩か後ずさった。

『…このクソ女がぁ』

 萼はおもいきり前蹴りされたことに頭にきたようだが同時に冷静さを取り戻した。

 木刀を構え直すと距離も縮めずいきなりその場から勢いよくそれを投げつける。

『うぉっ!?』

 浬がかろうじてそれをかわすとそこめがけて萼の拳が飛んできた。

『ぐっ!』

 萼はそのまま手も休めず2発3発と顔面めがけて拳を振るった。

『ははは、どーや。綺麗なお顔が台無しになるで!』

 さすがに何発もくらうと浬の表情も険しくなったがこれしきでおとなしくなるような女ではない。

『ふっ!』

 浬は槍の柄の方を突き出し萼のみぞおちに強く突き刺した。

『うぅっ!』

 不意打ちでそれをまともにくらうと萼は腹を押さえて浬から離れた。しかし浬は長い槍の連撃をあびせ追い討ちをかけていく。

 防ぐ術のない萼をバチンバチンと全身を滅多打ちにする。

『くそっ!』

 萼は走りだし工場の奥へ逃げていった。

『待たんかい!』

 浬もその後を追って走っていく。

 関西を巻き込む仕組まれた全面戦争がとうとう始まってしまった。
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