第63話 誰が友達だ
文字数 1,510文字
『それにしてもよ、聞いたか?暴走族がケジメ取ってん中にポン刀持って殴りこんだらしいじゃねーかよ。かなりよぉ、イカれてるぜ。ちょっと前の誰かさんたちみてーによ』
樹はそう言って笑ったがそこには誰も反応しなかった。愛羽たちは豹那に毎日のようにダンスを指導され、樹たち鬼音姫とバーベキューをしたり泪のお見舞いに行き瞬たちにも会ったりしているが、この5人に関してはあの日以来である。
微妙な空気になるのは当然に思えたが目的が一緒だからなのか数分もしない内にまず瞬が口を開き、自分が聞いたこと、調べたことを4人に説明した。
『どこの誰だか分からないってのは厄介だね。それに狙いも分からないんじゃ、いつまた襲われるか分からないし、その度に全てが後手になる』
『いや、多分狙われたのは風矢さんだと思う。調べた限りでは刀で斬りつけられたことは今までなかったはずなの。でも今回犯人はわざわざ大勢に姿をさらすようなことをしてまで風矢さんを襲おうとした。犯人にはそうまでしてでも風矢さんを斬らなければならない理由があった。と思うんだけど…』
琉花が言うと瞬は思い出したように、でも確信しているように言葉を返した。
『死んだ男の亡霊が暴走族を襲う、か…』
千歌は腕組みし難しい顔をしている。もはやここまで聞いて、すでにケンカでも戦争でもない命のやり取りをしている。瞬がステロイドを持っていきたいと言った嫌な予感とやらも満更大ゲサではないのかもしれないと思わざるを得なかった。
『ただの無差別じゃないだろうね』
そう言ったのはずっと黙って話を聞いていた豹那だった。
『今こうやって聞いただけでも、1年経ってまだ全く誰だか分からないってことは、まず間違いなく1人の犯行だろうね。そしてそいつは確かに異常者らしいがおそらく頭がいい奴だろう。相当キレるはずだし肝も据わってる。明確な目的があるはずだ。ただの遊びや無差別なんかじゃない。かなり計画的に動いてるのさ。その点今回は上手くいかなかったんだろうよ。まんまと邪魔されちまったんだ。その内必ずまた現れるはずさ。今度こそ失敗しない為に手のこんだ作戦でも用意してね』
あまりにも冷静に当然のように豹那が言うのでみんな静まり返ってしまった。
『…マジかよ。今回真面目にヤバいんじゃねーか?』
樹が軽く顔をひきつらせている。
『風矢さんが来てて暁さんと月下さんが大阪行くって言ってて、あたし嫌な予感がしてたの。だから2人に巻き込まれてほしくなかったんだけど…』
『ははっ、そいつは無理な願いだ。あいつらそういう星の下に生まれてやがんだ。そしてあたしらはそいつらに惹かれちまったクチなんだよ』
『哉原。前から思ってたけどさ、お前は本当によく喋るよね。少しは黙ってられないのかい?』
『おっ、そういや緋薙。お前の友達がお前に相談したらちゃんと聞いてくれないって悩みの電話よこしたぞ』
『だっ!誰が友達だ!ふざけるんじゃないよ!だいたいジョーダンじゃないんだよ。人が休みでゆっくり寝てれば「なんて言えばいいのかしら」とか「どんな顔すればいいのかしら」とか刑務所から帰ってきたらお務めご苦労様の方がいいのかとか。知らないんだよ、そんなの。死ぬように言っといたよ』
『そう言うなよ。お前の大事な友達だろ?』
『違うっつってんだよ!!次言ったら殴るからね!!』
『おーおー怖ぇー怖ぇー。友達の悩みはちゃんと聞いてやらなきゃダメだよなぁ?』
樹は瞬に促した。
『うん。あたしもそう思うよ』
ニコニコしながら瞬が言うと豹那は不機嫌そうに舌打ちした。
『そんな怒るなよー、豹那ー』
『名前で呼ぶんじゃないよ!!気持ち悪いね!!』
早朝の新幹線に鬼の声が響いた。
樹はそう言って笑ったがそこには誰も反応しなかった。愛羽たちは豹那に毎日のようにダンスを指導され、樹たち鬼音姫とバーベキューをしたり泪のお見舞いに行き瞬たちにも会ったりしているが、この5人に関してはあの日以来である。
微妙な空気になるのは当然に思えたが目的が一緒だからなのか数分もしない内にまず瞬が口を開き、自分が聞いたこと、調べたことを4人に説明した。
『どこの誰だか分からないってのは厄介だね。それに狙いも分からないんじゃ、いつまた襲われるか分からないし、その度に全てが後手になる』
『いや、多分狙われたのは風矢さんだと思う。調べた限りでは刀で斬りつけられたことは今までなかったはずなの。でも今回犯人はわざわざ大勢に姿をさらすようなことをしてまで風矢さんを襲おうとした。犯人にはそうまでしてでも風矢さんを斬らなければならない理由があった。と思うんだけど…』
琉花が言うと瞬は思い出したように、でも確信しているように言葉を返した。
『死んだ男の亡霊が暴走族を襲う、か…』
千歌は腕組みし難しい顔をしている。もはやここまで聞いて、すでにケンカでも戦争でもない命のやり取りをしている。瞬がステロイドを持っていきたいと言った嫌な予感とやらも満更大ゲサではないのかもしれないと思わざるを得なかった。
『ただの無差別じゃないだろうね』
そう言ったのはずっと黙って話を聞いていた豹那だった。
『今こうやって聞いただけでも、1年経ってまだ全く誰だか分からないってことは、まず間違いなく1人の犯行だろうね。そしてそいつは確かに異常者らしいがおそらく頭がいい奴だろう。相当キレるはずだし肝も据わってる。明確な目的があるはずだ。ただの遊びや無差別なんかじゃない。かなり計画的に動いてるのさ。その点今回は上手くいかなかったんだろうよ。まんまと邪魔されちまったんだ。その内必ずまた現れるはずさ。今度こそ失敗しない為に手のこんだ作戦でも用意してね』
あまりにも冷静に当然のように豹那が言うのでみんな静まり返ってしまった。
『…マジかよ。今回真面目にヤバいんじゃねーか?』
樹が軽く顔をひきつらせている。
『風矢さんが来てて暁さんと月下さんが大阪行くって言ってて、あたし嫌な予感がしてたの。だから2人に巻き込まれてほしくなかったんだけど…』
『ははっ、そいつは無理な願いだ。あいつらそういう星の下に生まれてやがんだ。そしてあたしらはそいつらに惹かれちまったクチなんだよ』
『哉原。前から思ってたけどさ、お前は本当によく喋るよね。少しは黙ってられないのかい?』
『おっ、そういや緋薙。お前の友達がお前に相談したらちゃんと聞いてくれないって悩みの電話よこしたぞ』
『だっ!誰が友達だ!ふざけるんじゃないよ!だいたいジョーダンじゃないんだよ。人が休みでゆっくり寝てれば「なんて言えばいいのかしら」とか「どんな顔すればいいのかしら」とか刑務所から帰ってきたらお務めご苦労様の方がいいのかとか。知らないんだよ、そんなの。死ぬように言っといたよ』
『そう言うなよ。お前の大事な友達だろ?』
『違うっつってんだよ!!次言ったら殴るからね!!』
『おーおー怖ぇー怖ぇー。友達の悩みはちゃんと聞いてやらなきゃダメだよなぁ?』
樹は瞬に促した。
『うん。あたしもそう思うよ』
ニコニコしながら瞬が言うと豹那は不機嫌そうに舌打ちした。
『そんな怒るなよー、豹那ー』
『名前で呼ぶんじゃないよ!!気持ち悪いね!!』
早朝の新幹線に鬼の声が響いた。