婚約者（１０）

「早々にご挨拶にうかがわないといけないな。」

　父親は独り言のように言った。

「お父さん、そうだよ。年が明けたらすぐにでも。こういうことはきちんとしておかないと。」

　長兄が言った。

「病院の方は心配ないから。お母さんと一緒についでに観光でもしてきたら？たまには。」

「そうだな。そうするか。」

　父親が言った。

「晩飯は食べていけるだろ？これからまだ予約診だけ少し入っているんだが。」

「うん。でもあまり遅くならないうちに帰ろうと思ってる。」

　成沢が言った。

「中華でもみんなでどうかと思ってたんですよ。」

　成沢の母親が言った。

「先に行って始めてればいいだろ。私と卓己は終わってから向かうから。信司は店があるから無理か？」

「電話して春香さんに聞いてみるわ。」

　母親はそういうとすぐに電話をかけにいった。

　結局成沢と私と母親とリサさん親子だけ先に店に行っていることになった。

「勇輝、私達支度して来るから優希さんと散歩でもして来たら？」

　母親に言われて私達はその場から退散した。廊下に出ると思わず大きく息をついた。