Ｆｉｏｒｉ（４）

「お兄さんがやってるお店なんだ？」

　ナルシスト発言はスルーして言った。

「そう。」

「教えといてくれればよかったのに。びっくりして焦った。」

「なんで？」

　成沢は不思議そうに聞いた。

「なんでって･･･」

　と聞かれてもうまく説明出来ない。ただ何となく家族を紹介してくれるつもりがあったなら前もって覚悟がいるような気がしただけだ。

　（覚悟？なんの？なんで？）

　自問自答した。

　（やっとお会い出来ましたねって？どういう意味？）

　そんなことをあれこれ考えているとさっきの感じのいい女性が私達のテーブルに戻って来た。

「勇輝くん、ありがとう。早速後でいただくわ。」

　成沢に向かって言った。

「車よね？」

「はい。」

「じゃあノンアルコールのドリンクをお持ちするわね。あなたは何をお飲みになる？」

　私に向かって微笑みながら聞いた。

「同じもので。すみません。」

　私は緊張しながら答えた。

「かわいい方ね。」

　私ににっこりと頷いた後、成沢に向き直って言った。

「やっと紹介してくれたのね。こんなかわいい方がいたんならもっと早く紹介してくれればよかったのに。」

　成沢は曖昧に笑っていた。

　さっきからやっと紹介してくれた云々と成沢の兄も言っていたが･･･私達はそんな付き合いではない。

　今日が初めてのデートなのだ。何か違和感を感じた。