本物登場(4)

文字数 351文字

 手の中のスマホがまた震えだした。着信していた。迷っているうちに切れた。じっと見ているとすぐにまたかかってきた。

 思い切って電話に出た。

「ごめん。」

 勇輝は静かに言った。私は何も言わなかった。何も言えなかった。

「会って話したいよ。ちゃんと説明するから。どこにいる?家?」

「うん。」

 私は小さな声で言った。

「今からそっち行くけど出られない?」

 迷って答えられなかった。会いたい。でも今は会いたくない気持ちもある。

「出るのは無理?家でしょ?今から行くから。インターホンに出てくれる?」

 勇輝がもう一度言った。

「外。」

「え?」

「中庭にいるの。だから無理。」

「ずっと外にいたの?」

「うん。」

「こんなに長い時間?」

「うん。」

「すぐ行くから。表に来て。」

 そう言うなり電話は切れた。私はエントランス側に歩きだした。
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