研修旅行(19)

文字数 597文字

 向かう途中のタクシーの中でも私は何度もお礼を言った。

「そんな、ホントにもういいから。気にしないでよ。どうせ部屋でゴロゴロしてただけなんだから。」

「でも時差で疲れがピークになる頃なのにすいません。」

「そうか。高橋さんも時差ぼけだな。」

 安藤さんは私の方を向いて思いきりニコッと笑った。釣られて私も微笑む。

「私の場合ただのボケです。残念ながら。」

「ただのボケ子か。」

「はい。」

 苦笑いでごまかした。

 WWPに着くとすぐにカメラを引き取った。

「ありがとうございます。本当に助かりました。あってよかった。」

 私は現地スタッフの女性に言った。

「こちらはJさんのただのボケ子さん。」

 安藤さんが私をそう紹介した。

「はい。ただのボケ子です。以後気をつけます。」

 私は照れ笑いしながら言った。

「本当は高橋優希さん。毎日東京からここにもたくさん送客してくれてます。」

 改めて安藤さんが私を紹介し直した。

「どうもはじめまして。どうぞよろしくお願いします。」

 現地スタッフの女性が頭を下げて言った。

「送客なんて。そんな。こちらこそどうぞよろしくお願いします。」

 私も頭をペコペコと何度も下げて言った。

「これ。みんなで。さっき渡し忘れたから。」

 安藤さんは何か箱をスタッフに渡して言った。

「うわぁ。何かしら。ありがとうございます。」

「じゃあちょっと急ぐから。僕たちはこれで。」

 私達は退出の挨拶をしてホテルに戻った。
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