ご褒美(11)

文字数 544文字

「あ、ここか・・・」

 手を繋いでぶらぶらと歩いていた私は全体的に白のイメージで統一された建物の前でふと足を止めた。

 これまで訪問したことはなかった。もちろんプライベートでは縁などあるわけない。

 WWP新宿店。

 明るく開放的でかつ洗練されたサロンの雰囲気は安藤さんのイメージぴったりと言える。いや安藤さんがサロンのイメージキャラクターにぴったりと言うべきか。

「何?」

 私が止まったので勇輝も足を止めた。

「ブライダルサロン?」

 勇輝はちょっと警戒するみたいに言った。

「気が早いんじゃない?」

「違うよ。お客さん。販売店。今度から担当するの。」

「なんだ。そうか。」

 納得したような様子で勇輝は言った。

「ブライダルサロンなんかも販売店なんだ?」

「うん。ブライダル系販売店。海外挙式絡みで。ハネムーンとか。」

「ああ。そういうことか。」

「ほら私、ウエディング担当になったし。」

「そうか。そう言ってたね。」

「いろいろめんどくさいんだよ。めんどくさいって言っちゃなんだけど失敗が許されないし。」

 ウエディング絡みのクレーム事例を思い出しながら言った。普通の海外旅行とは思い入れが当然違う。なんといっても一生に一度のことだから。

「まあそうだよなぁ。」

 2人でショップの前にしばし佇んでそんなことを話していた。
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