ご褒美(14)

文字数 576文字

 箱を開けるとメタリックレッドのカメラが入っていた。

「コンパクト一眼。」

 勇輝が言った。

「かわいい。」

 手に取ってみた。軽いし普通のデジカメより少し大きいくらい。

「これが一眼なの?」

「そう。」

 そんな高価なプレゼントを用意してくれた勇輝に驚嘆していた。

「アクセサリーの方がよかった?」

「ううん、とんでもない。こんな、こんなすごいもの貰うわけにいかないよ。」

 かなり戸惑いながらそう言った。

「いいんだよ。何がいいか考えたんだけど。自己満足かな。」

「もったいないよ。使いこなせるかな?宝の持ち腐れになったらどうしよう・・・」

 勇輝はカメラを手に取ってみてあちこちいじり始めた。

「大丈夫。俺が教えてあげるから。そのために初心者モデル買ったんだから。」

 得意げに構えてみせる。

「一から全部教えてあげるから。」

 胸がいっぱいで言葉が出て来なかった。

「これからいい季節になるから一緒に撮影に出かけよう。記念をいっぱい残そう。」

 涙が出そうだった。

「ありがとう。ありがとう。うれし過ぎる。泣きそう。」

「オタクデートもたまにはいいだろ?」

「本当にありがとう。ごめんね。でも本当に受け取れないよ。だって私、勇輝に何を返せばいいの?」

「いいんだよ、そんなこと。俺が満足なんだから。受け取って。ね、はい。」

「勇輝。」

 胸がいっぱいだった。惨めな恋愛の思い出なんてバイバイだ。
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