鼓動のensemble(13)

文字数 521文字

「とにかく俺とあいつはちゃんと別れた。あとは優が俺の言ったことを信じるかどうか。」

 勇輝は立ち上がってお酒のお代わりを注いで戻ってきた。そしてガラステーブルの上に鍵を2つ置いた。

「証拠ってわけじゃないけど。」

 勇輝はこの前彼女が持っていたキーホルダーがついた鍵を手に取ってキーホルダーを外した。

 私は黙って勇輝を見ていた。
 彼は外したキーホルダーを静かにごみ箱に捨てた。

 ガラステーブルにはこの前私と一緒に選んで買ったキーホルダーがついた鍵が残った。

「なんだか芝居がかってるけど。これは優が持ってて。」

 勇輝は私の手に鍵を持たせた。

 私は泣きそうな目で勇輝を見上げた。うれしいのか泣きたいのかよくわからない。

 ゆっくりと勇輝は私の頬に手を触れた。フェイスラインにかかる髪を耳にかける。

 勇輝はその長い指で私の耳たぶと頬から顎の辺りをそうっと撫でた。

 体まで脱がされていくような無防備でぞくっとするような感覚で鳥肌が立つ。

 勇輝の指がすっと唇を撫でた。それから私に屈み込んで唇を重ねた。

 求め合い、キスはどんどん激しくなっていった。

 目を閉じていたにも関わらず遊園地のコーヒーカップに乗っているみたいに視野がぐるぐると回っているような気がした。
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