研修旅行(35)

文字数 558文字

 ホテルが並ぶ朝の街は確かに昼間とは違う顔を見せているがこんな時間でもフル稼動しているのがわかる。

 それでも海岸通りを歩く人は昼間ほどではなく散歩は気持ちいい。

 ダイヤモンドヘッドを見ながら公園の方にゆっくりと歩いていった。

「もう帰国か。ついさっき来たみたいなのに。」

「そうですね。」

 忙しくて何がなんだかわからないうちに帰国日を迎えた感じだった。

「もうちょっといたかったな。忙しかったでしょう?」

「はい。結構。」

「せっかくなら2人でいろいろなとこ行ったりマリンスポーツとかしてみたかったな。」

 私が黙っていると安藤さんが笑って言った。

「何言ってるんですか?研修ですよって言うんでしょ?」

「はい。まあそうかな。」

「楽しい研修だったよ。特に昨日の夜は。」

「安藤さん・・・」

 私は立ち止まった。

「私、昨日のことは・・・」

 安藤さんも立ち止まって私を見た。

「私、付き合ってる人もいるし・・・」

 安藤さんは人差し指で私の唇に触れた。心臓が大きく跳ねた。体が震える。

「言っちゃダメ。わかってる・・・」

 安藤さんは指先で私の上唇をそうっとなぞった。服を剥がれていくような無防備な気分になる。

「好きだよ。」

 総毛立つような瞬間。頭も体も機能停止。

「だめ・・・」

 私の震える唇がやっとそう言った。

 安藤さんの唇が私の言葉をふさいだ。
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