納会の日(8)

文字数 416文字

 「詳しいだろ?」

 成沢が長谷川さんを指差しながら言った。

 「こいつ、こういうことすごく詳しいよ。マメなヤツなんだよ。見た目によらず。」

 確かに見た目によらず、だ。
 マメな男には見えない。控え目で穏やかで自分を前に出していく感じは一切ない。

 長谷川さんは取り立ててイケメンでもなければ不細工でもない。これといった外見的特徴もない。

 いわゆる『可もなく不可もなく』というカテゴリーに類別されそうな男だった。

 成沢がいなければ会うのが2度目の長谷川さんをこの店で見つけるのは難しかったに違いない。

 「雰囲気もいいね。」

 奈津美が言った。

 内装は和風とか洋風とかアジアンテイストとかカテゴライズするのは難しい。

 全体的に清潔感があり、薄暗さも感じさせない。

 かといって煌々とまぶしすぎるわけでもなく温かみのある照明が落ち着く。

 ごく低い音でジャズらしき音楽がかかっていた。もっとも私は詳しくないのでそれがどんな趣味のものなのか味わえない。
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