雨上がりの海(6)
文字数 514文字
車を下りて少し歩いて海岸に出た。微かに生臭いような生温い潮風が髪を巻き上げる。
砂浜に下りると雨上がりの海は波が荒く色も濁って見えた。海上ではウィンドサーフィンをしている人もたくさん見える。
日影のベンチに並んで腰掛けた。行く人の目には熱い恋人達としか写らないだろう。
でも実際にはこれから話すことの重い空気が2人の間に漂っていた。
「金曜日のことだけど。」
沈黙に耐え切れず最初に口を開いたのはやっぱり私だった。
「うん。」
勇輝は俯き加減で少し前方を見ていた。
「仕事上の知り合いと食事してたの。家が近くだから。偶然。」
言っている自分でも言い訳めいて聞こえた。でも勇輝が何も反応してくれないから余計なことまでぺらぺら話すことになる。
「ホテルにいたっていってもつまりバーに行こうとしてただけで浮気とかそんなんじゃ・・・」
「そんなことどうでもいいよ。ほかの男と酒飲もうと部屋行こうと。」
不愉快そうな声で勇輝に遮られた。
「ごめん。」
私は下を向いて爪をいじった。ネイルが一箇所剥げかけていた。そこが妙に気になった。
「アイツのことだけど。早紀のこと。」
勇輝がとうとう彼女の名前を口にした。とたんに私の全身に緊張が走り鳥肌が立った。
砂浜に下りると雨上がりの海は波が荒く色も濁って見えた。海上ではウィンドサーフィンをしている人もたくさん見える。
日影のベンチに並んで腰掛けた。行く人の目には熱い恋人達としか写らないだろう。
でも実際にはこれから話すことの重い空気が2人の間に漂っていた。
「金曜日のことだけど。」
沈黙に耐え切れず最初に口を開いたのはやっぱり私だった。
「うん。」
勇輝は俯き加減で少し前方を見ていた。
「仕事上の知り合いと食事してたの。家が近くだから。偶然。」
言っている自分でも言い訳めいて聞こえた。でも勇輝が何も反応してくれないから余計なことまでぺらぺら話すことになる。
「ホテルにいたっていってもつまりバーに行こうとしてただけで浮気とかそんなんじゃ・・・」
「そんなことどうでもいいよ。ほかの男と酒飲もうと部屋行こうと。」
不愉快そうな声で勇輝に遮られた。
「ごめん。」
私は下を向いて爪をいじった。ネイルが一箇所剥げかけていた。そこが妙に気になった。
「アイツのことだけど。早紀のこと。」
勇輝がとうとう彼女の名前を口にした。とたんに私の全身に緊張が走り鳥肌が立った。