通勤電車（５）

「ずっと前からここに住んでるの？」

　駅までの道を歩きながら私は成沢に聞いた。成り行きでこうして何故か一緒に通勤することになったが２日前に会ったばかりでお互いのことなどほとんど何も知らなかった。

「いや。今年に入ってからだよ。本社勤務になってから。」

　成沢は普通のペースで歩いているらしかったが、私は時々小走りにならないとついていけない。

「ずっとこっち？」

　成沢が私に聞いた。

「うん。物心ついた時から。」

　姉の小学校入学前に購入したという今のマンションに住む前には別のところに住んでいたということだが私は覚えていなかった。

「前はどこに住んでたの？」

　私は成沢に聞いた。

「横浜の奥の方。なんで？」

「別に。ただ何となく聞いてみただけ。実家？」

「違うよ。学生の時から住んでただけ。」

「なんでここに住むことにしたの？」

　私は特に気になったわけではないがちょっと聞いてみた。

「別に。特に理由はないよ。前住んでたとこだと会社まで遠いし。」

「ふぅん。」

「たまたまここに来たってわけ。ラッキーだろ？」

　ニヤリと不敵な笑みを浮かべて成沢は言った。

　キラースマイル･･･

　一瞬その言葉が頭に浮かんだ。