初詣(11)

文字数 534文字

元カレは焦った様子もなく不敵にもニヤリと笑っていた。いまさら他の店にはいけない。

こんなことなら2階の店にしておくんだった。元カレとよく来ていたのは2階だったからあえて3階の店を選んだのだ。

私達はやっと飲みはじめたばかり。「やっぱりほかに行こう」というには遅すぎ「そろそろ行かない?」というには早過ぎる。

「どうしたの?なんかテンション低くない?」

成沢に話し掛けられた。

「そう?そうでもないよ。」

私は取り繕うように笑った。

「いつもみたいにガンガン飲んだり食べたりしないからさ。」

「いやぁこれからこれから。さぁ食べよう!」

私はベーコントマト串をパクッと口に入れた。トマトの熱い汁が口の中に溢れる。

「あっつ!」

慌ててガブリとビールを飲んだ。

「落ち着け。がっつくな。大丈夫か?」

成沢が笑いながら言った。

「うん。熱かった。舌ヤケドしたよ、もう。」

「焦って食うからだよ。ゆっくりお上品に食べればいいんだよ。」

「はいはい。気をつけます。」

私はまたガブリとビールを飲んだ。

ちらりと元カレグループの様子を伺った。恐ろしいことに元カレは私の視界に入る端の席にこちらを向いて座っている。

成沢は彼らに背を向けているので見えない。元カレのまーくんは明らかにこちらの様子をうかがっているようだった。
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