婚約者（２１）

「オメデタか？」

　成沢の父親が大きな声で聞いた。

「はい。」

　春香さんがあの魅力的な笑顔で言った。幸せオーラが部屋中に拡散していくようだった。

「よかったわねぇ。いつわかったの？」

　母親も言った。

「おととい病院に行ってきました。」

「そうか。それはよかった。」

　父親が言った。

「おめでとう。」

　長兄も弟夫婦に言った。リサさんも一緒におめでとうございますと言っていた。

「赤ちゃんが生まれるんだって。」

　リサさんが娘に言っている。

　成沢と私もおめでとうございますと言った。

「これは乾杯しなおさなきゃいかん。」

　成沢の父親はすっかり上機嫌で言った。

「男の子か？」

「まだわかるわけないじゃありませんの。いやね、あなたお医者様でしょ。」

　成沢の母親がたしなめた。

「ハハハ。そりゃそうだ。男の子なら成沢家の総領だな。」

　ほとんどはしゃいでるとも言えそうな様子だ。

「お父さん！」

　すぐに妻にたしなめられた。
　長兄夫婦は慣れきったように聞き流している様子。

「今の時代総領も何もないだろ。兄さんとこも２人目まだだし。」

　信司さんが言った。気まずそうにしているのは２番目の兄夫婦の方だった。