婚約者（７）

「ユウキ･･･さん？」

　リサさんが不思議そうに繰り返した。

「そうなの。こちらもユウキさんておっしゃるんですって。」

　母親が何だかいぶかしむように言った。私はいけないことをして窘められているような気がしてきた。

　隠し事でもしているような、嘘の片棒を担いでいるような気分。そして成沢の母親は何か煙たく感じているような･･･

「２人ともかけなさい。今コーヒーを持って来るから。」

「お義母様、私が運びます。」

　リサさんは成沢の母親の後を追っていった。

　私は２人の姿が消えるのを待って成沢を問い詰めた。

「ちょっとどういうこと？いったいこの空気は何？」

「うん。」

　成沢は気まずそうな顔で何か言おうとした。

「何なの、この雰囲気。」

「ごめん。誤解してるんだ。」

「何を？」

　小声でやり合っていると事態がもっと膨らむような登場人物がペアで現れた。

「おお、勇輝、来たか。」

　大きなよく通る声で年配の男性が言った。私は慌てて立ち上がってお辞儀をした。

「いらっしゃい。お待ちしてましたよ。はじめまして。何さんとおっしゃるのかな？」

　声だけでなく全身からパワーが溢れているようで圧倒されそうだ。

「は、はい。高橋優希と申します。」

「なんだって？聞き間違いか？貴女もユウキさんて言うの？」

「はい。優希です。」

　私は馬鹿みたいに直立不動のまま言った。