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文字数 553文字

「夕飯は何にしようかなぁ。」

 第2弾の生地をオーブンに入れてマグカップからコーヒーを飲みながら母が言った。

「出かけるの?」

「ううん。今日は家で食べる。」

「そう。なんか食べたいものある?」

「うーん。」

 すぐには思いつかない。お腹が空いているわけでもない。

「パパは?」

 母がテレビを見ながらごろ寝をしている父に向かって聞いた。

「なんでもいいよ。ママに任せる。」

 めんどくさそうに父が返事した。そういいつつ我が家で一番食事に固執しているのは父にほかならない。

「そうだ。あれ食べたい。」

 私は思いついて言った。

「何?」

 母がスーパーのチラシから目を上げて私の方を見た。

「ゴロゴロポテトサラダ。」

「え?」

「ほら、ウインナーが入っててジャガ芋がゴロゴロしてるのだよ。」

 私は説明した。

「ああ。あれね。」

 マスタードとオニオンの入った母のお手製のフレンチドレッシングがおいしいのだ。

「それからチンジャオロース。」

「チンジャオロースか。いいわね。不思議な献立だけど。」

 母はチラシにまた目を戻して買い物メモを書きはじめた。

「じゃあ焼き上がったら買い物行ってくるわ。」

 母が言った。

「私行ってこようか?」

 私は聞いた。

「いいわよ。下までだし。ほかにも買い物あるし。」

 下というのはマンションの敷地の脇にあるスーパーのことだ。
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