ご褒美(10)

文字数 530文字

「本当にこういうとこ好きだよね。」

 週末、勇輝と一緒に新宿の家電量販店のエスカレーターに乗りながらちょっとぼやき気味に言った。

「すぐ終わるよ。今日は予約してたのを受け取るだけだから。」

 勇輝は私をなだめるような言い方をした。

「勇輝ってもしかしてけっこうなオタク?デートするなら家電量販店じゃなくてヒルズとかソラマチとかベイエリアとかそれっぽいとこは思いつかないわけ?」

 私は軽い口調で呆れてみた。本音を言えばそんなデートスポットにこだわっているわけではないけれどだからってまた家電量販店って。

「そんなミーハーなとこ行きたいの?」

「オタクデートよりはミーハースポットがいい。」

「まあまあ。すぐ終わるから、ね。」

 エスカレーターの2段上に立って私を見下ろす勇輝の、ちょっと甘えるような表情がたまらなくかわいくて、なんでも許してしまいたくなる。

 ついつられて弱々しく微笑みながら騒々しい店内を人波をぬって歩いていった。

 勇輝はカメラコーナーでなにやら品物を受け取るらしかった。私は退屈しのぎにデモ機を手に取ってみたりしていた。

「ごめんね。お待たせ。もう済んだから。」

 用事を済ませた勇輝が戻ってきて空いている方の手で私の手を取った。

「行こう。」

 頷いてついていった。
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