ご褒美(12)

文字数 302文字

 店内から人が出てくる様子がしたので慌てて勇輝の手を引いた。あのシルエットは安藤さんかもしれない。

「逃げなくたっていいじゃないか。」

「やだ。見つかりたくない。」

 なんとなく勇輝に後ろめたくてその場から慌てて遠ざかった。

「こそこそしなきゃいけない関係でもないじゃん。」

「やだよ。プライベートの時に仕事関係者に会うのは。」

 勇輝はナルシストだしこういう時にこそこそ隠れたりしないタイプの人間だ。

 だけどなんで後ろめたく感じなきゃいけないんだろう。別に安藤さんと何かあったわけでもあるまいし。

 バカバカしい。安藤さんはきっと私のことなんて覚えているはずもない。

 サロンから遠ざかりながらそんなことを考えていた。
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