婚約者(2)

文字数 502文字

 駐車場にはほかに車が2台とまっていた。どちらもピカピカに磨きあげられていた。

 車に詳しくない私でも高級車だということだけはわかる。駐車スペースと建物の間には広々とした庭が広がっていた。

 塀に沿ってぐるりと針葉樹が植えられ、所々手入れの行き届いた植栽が配置されている。

 ガーデニングの雑誌に載っているような瀟洒な設えの庭だ。建物の近くは広い芝生のエリアのようでガーデンパーティーでも出来そうな雰囲気だ。

 その庭を迂回するように道は玄関へと続いていた。私は信じられない思いで前を行く成沢の後ろ姿を見ていた。

 成沢がこんなお金持ちの御曹司だなんて想像出来ただろうか?

 成沢が住んでいるアパートはごく普通だ。平均的な独身サラリーマンが1人暮らしをする住まいとして全く贅沢なものではないと思う。

 もっとも部屋の中に入ったことはないし建物の外観しか見たことはない。

 それでもマンションというには質素な建物でどうみてもありきたりのアパートとしか言いようがない。

 成沢の生活レベルは・・・そんなことを細かく知っているほどの関係ではない。

 まだ知り合って間もないのだ。改めて成沢という人を何も知らない遠い存在だと思った。
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