帰り道(3)

文字数 553文字

「遅くなっちゃったな。もっと早く帰るつもりだったんだけど。大丈夫?」

 デジタル表示はちょうど「21:00」を指していた。

「私なら大丈夫だよ。」

 意外なことに私より成沢の方が帰宅時間を気にしていた。もちろん私を気遣かってのことだ。

「遅いから休憩は1回くらいにして、渋滞がなければ2時間くらいでつけると思うけど。」

「大丈夫だよ。うちは。」

「23時くらいには着けると思うんだ。」

「うん。焦らないでも大丈夫だから。」

 成沢はこういうところで気を遣ってくれるのはうれしい。

「まあでも1人暮らしってわけじゃないし。両親と住んでるんだからあんまり遅くならない方がいいよ。」

 自分に言うみたいに言った。

 途中のサービスエリアでコーヒーを飲んだ。成沢は首と肩をぐるぐる回していた。

「疲れたでしょ?」

 私は聞いた。

「ちょっとね。そっちこそ。」

 成沢はあくびを押し殺した私を見て言った。

「うん。ちょっとね。まあ運転してるわけじゃないから。」

 私は言った。

「そろそろ行こうか。」

 車に戻るとさっき買ったブラックミントのガムを成沢に渡した。

「ありがと。」

 成沢はガムを口に入れて言った。

「眠かったら寝て構わないよ。」

「ううん。眠くない。平気。」

 初めはそう言ったものの途中で眠くなってきた。ガムを口に放り込んで今朝からの事を考えた。
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