本物登場(2)

文字数 369文字

 ひるんだように勇輝は私の腕を放した。私はくるりと踵を返して階段を下りた。

 とぼとぼと階段を下りるに連れ、感情が血流を取り戻したみたいに涙が溢れてきた。

 悔しくて情けなかった。私を見る彼女の余裕に満ちた目つき。見下しているような表情。

 確かにあんな美人には太刀打ち出来ない。勇輝も気まぐれ過ぎる。

 あんな美人と付き合っておいて今度は私みたいな平凡な女を相手にしようだなんて。

 悔しいのはどこを取っても彼女は勇輝にひけを取らない美人で釣り合いの取れたカップルに見えること。

 私はと言えば勇輝といると釣り合っていないんじゃないかとどうしても気にしてしまう。

 家への道を歩きながらそんなことを考えているとまたじわりじわりと涙が湧いてきた。

 家に帰るのにこんな顔では入れない。仕方なしにマンションの敷地内の公園のベンチに座り気持ちを落ち着かせた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み