12話 惰性の高校生活

文字数 920文字

 特にやりたい事も、夢や希望も何もなく高校生になった。
 唯一、存在したのは、『まだ、生きているなんて』という絶望だけだった。
 推薦入試を頑張った割には、高校には何も期待をしていなかった。

 高校でも半分くらいは見た顔だった。
 こたみちゃんとは同じ高校だったけれども、選んだ学科が違った。
 分かりやすく言えば、こたみちゃんは進学コース。私は就職コースだった。
 ついでにこれ以外には花嫁コースがあった。
 花嫁コースは女子が多かったが、1学年に1・2人ぐらいの男子もいた。
 実際に花嫁を目指すコースではないので、私の時代には就職コースと変わらなかった。

 とはいえ、最初ぐらいはやる気を出してみようかと思った。
 何か部活に入れば、気がまぎれるかと思ったが……もともと、人と関わるのが好きではない。
 入部前に気力が尽きて、結局どこの部活にも入ってはいない。

 何も変わらなかったのは、人だけではない。制服もあまり変わらなかった。
 中学のセーラーがブレザーになった。けれども、ブレザーは小学校で着ていたので新鮮味はない。
 ただ、中学の時の紐紐(ヒモ)タイが、ネクタイになったのが大きな変化だった。
 入学前にはインターネットで結び方を調べ、さらには覚えたてのチャットでも結び方を聞いた。

 後から知ったが、女の子のネクタイは大抵『結んだままになっているモノ』が多いらしい。
 私の通った高校は自力で結ぶものだった。
 もちろんだからこそ、他人とは少し違う結び方でオシャレをする女子もいた。
 私は一番簡単で分かりやすかった結び方で満足した。
 父親から教えてもらうという手もあったらしいが、その頃、父はほとんど帰ってきた覚えがない。
 そして、父の仕事はネクタイをしないという事も分かっていたので、『父親に教えてもらう』という選択肢はなかった。

 学校までの道のりは、ほぼ一直線になった。
 真っすぐ2キロほど坂を(くだ)ると、高校に着く。小学中学はその間にあったので、通学路もただ『伸びた』だけで景色は変わらない。
 坂を(くだ)る分、帰りは上りになるので、道が伸びた分だけ疲れも()まった。

 小中学校とほぼ変わらない生活が、高校生活に引き継がれただけで、夢や希望なんてものは一欠けらもなかった。
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